これまでは、国ごとのEC市場規模のデータは存在していても、国ごとの越境ECのデータを集めて数値化したものはなかなか存在しませんでした。しかし、新型コロナウイルスの拡大により越境EC界隈が盛り上がり、国別で越境ECの情報が書き出されるようになりました。
そこで今回は、2021年度版として上記のデータを整理し、さらに中国・米国に焦点を当てた越境EC市場に関する統計資料を紹介していきます。
目次
越境ECでの購入者に関するデータ
ここでは、DATAREPORTALの「DIGITAL 2021 OCTOBER GLOBAL STATSHOT」のデータを参考にし、下記の2点について紹介していきます。
- 越境ECを利用し実際に購入した人の割合
- 全体のEC取引額を大元とした越境ECでの購入金額の割合
それでは、上記について詳しく見ていきましょう。
越境ECを利用し実際に購入した人の割合
ここでは、過去に海外から越境ECを利用し商品を購入したことがある人の割合を説明していきます。データに関して期間の言及はありません。
アジア圏では香港が75%、シンガポールが73%、マレーシアが52%と高い数値を打ち出し、上位にランクインしています。
第1位はエストニアの86%となっています。
また越境ECの急激な成長を見せる中国では、47%と想定外に低く、日本のデータはランク外ということで表示がありませんでした。
新型コロナウイルスが拡大する以前は、国土が比較的小さかったり、国内の市場がそこまで大きくない国の方が、越境ECを通じて商品が購入されやすいという認識でした。
その傾向は変わらず、新型コロナウイルス拡大後も依然として面積の小さい国の方が越境ECの利用率が高いと言えます。
エストニアやシンガポール、香港などがよい例です。
全体のEC取引額を大元とした越境ECでの購入金額の割合
ここでは、全体のEC取引額をベースとし、その内訳として越境ECでの購入金額の割合を紹介していきます。期限についての言及はありませんが、これまでの全てのEC取引を考慮したうえで、そのうちの越境ECを通じた購入金額の割合を表記していきます。
越境ECの利用を通じて購入したマレーシア人は2人に1人いる計算になり、越境ECにおける購入額は非常に高いです。
シンガポールでは越境ECでの購入経験も多いうえ、その購入金額も高いです。
日本についてですが、越境ECを利用する理由としても、「どうしても海外にしか売っていない商品だから…」というものがほとんどです。
日本全体のEC取引額をベースとしたとき、その内訳としての越境EC購入金額の割合はたったの13%と低く、世界に比べると越境ECが浸透していないことがわかります。
世界の越境EC市場規模について
ここでは、世界の越境EC市場規模について、具体的な数字を使用して解説していきます。
以下の順序で説明します。
- なぜ越境ECの市場規模が拡大しているのか?
- 日本人の越境EC利用による中国・アメリカの商品購入金額
- アメリカ人の越境EC利用による商品購入金額
- 中国人の越境EC利用による商品購入金額
世界全体でみた越境EC市場規模の統計としては、2021年で9,877億米ドル、2030年頃には2兆9,185億7,000万米ドル程度まで上昇すると予測され、2022年〜2030年で年平均成長率が21.4%まで拡大していくと考えられています。
今後も発展途上国のインターネットのインフラ整備が進んでいくと、さらなる越境EC市場の発展が期待できます。
また、経済省が公表した2020年度の「電子商取引調査」では、2019年における世界の越境EC市場規模は7,800億米ドルとされており、それが2026年頃になると4兆8,200億米ドル程度まで成長すると推測されています。
なぜ越境ECの市場規模が拡大しているのか?
市場規模拡大の理由として考えられるのは、自国には存在しない商品を購入したいと望む人が増えてきたことや海外の方が自国よりも安く商品を購入できることなどが挙げられます。
さらに、海外の民族的衣装に興味を持ったり、アニメなどのジャパニーズ・カルチャーなど国独自の文化に関心を示す人が多くなってきたことも、越境ECの市場規模拡大の背景として考えられます。
越境EC利用需要の上昇に伴い、海外の顧客獲得を目指し越境ECを始める事業者が増加していることも一つの要因として考えられます。
日本人の越境EC利用による中国・アメリカの商品購入金額
経済産業省からの調査では、2020年における日本の越境BtoC-ECの市場規模は、日本額で3,416億円となりました。
2018年に行われた同じ調査によると、市場規模は2,765億円だったという結果が出ていて、市場規模は毎年成長していることがわかります。
日本人が中国から越境ECを通じて商品を購入した金額は1兆9,499億円となっています。
一方、日本人がアメリカから越境ECを通じて商品を購入した金額は9,727億円でした。
以上から、総じて、越境ECを通じた日本人の中国・アメリカの商品購入額は年間2兆9226億円ということになります。
アメリカ人の越境EC利用による商品購入金額
アメリカでの越境BtoC-ECの市場規模は年々拡大しています。
経済産業省による調査報告では、2020年におけるアメリカ人が日本・中国から越境ECを通じて商品を購入した金額は1兆7,108億円となっています。
2019年の越境EC市場規模が1兆5,570億円であったことから、2019〜2020年の1年間で9.9%の成長率があることがわかります。
さらに、2021年におけるアメリカの越境EC市場規模は2兆769億円程度まで上昇する見込みとなっています。
以上の数値から、アメリカの越境EC市場はこれからもさらなる成長を遂げていくはずです。
中国人の越境EC利用による商品購入金額
中国における越境BtoC-ECの市場規模も毎年上昇している傾向があります。
経済産業省による調査報告では、2020年における中国人による日本・アメリカの商品購入金額は4兆2,617億円となりました。
2019年の越境EC市場規模は3兆6,652億円であったため、2019〜2020年の1年間で16.3%の成長率が見られます。
さらに、2021年における中国人の越境EC利用による市場規模は4兆9,359億円程度まで上昇すると言われています。
越境ECの可能性
越境ECは多くの方に利用されるようになり、今後さらに強化されていくべきサービスの一つとなってきました。
以下の点に焦点を当て、解説していきます。
- ECとインバウンドの関係性
- ウェブインバウンドの見通し
ECとインバウンドの関係性
ここでは、越境ECとインバウンドの関係性について説明していきます。
近年では、新型コロナウイルスの蔓延によって海外への渡航が制限されるようになりました。
日本は2020の東京オリンピックで海外からの来客を見込んで日本の商品の魅力を伝え、自国に帰った際に購入ルートとして越境ECサイトを用意しておくという算段でしたが、日本を訪れる外国人観光客も新型コロナウイルスにより減少し、日本国内でのインバウンド消費も急激に減少しました。
感染症が落ち着き、渡航の制限が緩和されていくことで、日本を訪れる外国人観光客も増えていく見込みなので、それに比例しインバウンドの消費も増えていくでしょう。
実際に日本に訪れた中国人旅行者を対象とした日本貿易振興機構のアンケートでは、越境ECを通じて日本の商品を購入した理由について、「日本旅行のときに気に入った商品を見つけたから」という返答が全体のおよそ40%を占めています。
上記のように、インバウンドと越境ECは深い関わりを持ち、互いに影響を与え合っているといえます。
感染症の終息を願って、今の段階から越境ECのさらなる強化を目指していくことが必要になってくるでしょう。
ウェブインバウンドの見通し
インバウンドによる商取引が減少し、渡航制限のかけられた今、ウェブインバウンドの見通しを立てていく必要があります。
このウェブインバウンドでは、以下の3つの項目が大きく関わってきます。
- 言語
- 決済
- 物流
それでは、一つ一つ見ていきましょう。
言語
住所の入力をする際に海外のフォーマットに対応しているものである必要があります。
越境ということなので、当然何か問題があったときに外国語で対応しなければならない場合も少なくありません。
具体的には、さまざまな言語での入力フォームを準備したり、外国語で対応できるサポート体制を整えていく必要があります。
決済
海外のクレジットカードなどに対応する必要があります。
不正取引による決済のリスクを考え、対応しなければなりません。
多様な決済方法と不正取引を防ぐシステムを構築する必要があります。
物流
越境ECを利用する場合は、当然海外発送に向けた準備をしなければなりません。
梱包にも工夫が必要なほか、関税や、禁止されている商品の詳細を知っておく必要があります。
貿易取引を考えると、ある程度は書類の準備も必要です。
専門業者に発送書類発行や検品などを任せることも一つの手です。
越境ECの発展とともに、越境ECを開始する事業者のサポート体制も整ってくると予想できます。
まとめ
今回は、越境ECを利用し実際に購入した人の割合を示し、日本とつながりの深いアメリカ・中国における越境EC市場規模について紹介していきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回紹介した数値を見ていただければわかると思いますが、現代は越境ECの市場規模が年々拡大しています。
このままインターネットショッピングが発展していけば、私たちの生活もより利便的になっていくのではないでしょうか。