越境ECの市場規模について丨拡大の背景や日本・中国・米国の比較、拡大の背景を解説

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越境ECの市場規模は、世界的にも拡大を続けています。その伸び幅は非常に大きく、グローバル化に向けて大きな一歩を踏み出すチャンスと言える戦略です。

この記事では、越境ECの市場規模や、市場が拡大している理由などについて詳しく解説していきます。

越境ECの市場規模は2027年に541兆円へ

 

越境EC 市場規模

出典元:令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)

経済産業省が公表した「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」によれば、世界の越境ECの市場規模は2027年には約541兆円(4兆8,561億USドル)にまで拡大すると予測されています。

越境EC 市場規模

出典元:令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)

市場規模について日本から海外に目を向けてみると、中国とアメリカは非常に大きなEC市場規模があることがわかります。

上記は、経済産業省の「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」で公表された国別のEC市場規模です。

中でも中国の市場規模は大きく、1位の中国と2位のアメリカでは3倍近い差があります。日本との比較では、中国EC市場は14倍以上もの開きがあります。越境ECでは、これらの国の大きな市場を狙うことが可能です。

日本・米国・中国の3カ国間の越境EC市場規模

ここからは、日本・米国・中国の3カ国間の越境EC市場規模についてご紹介します。経済産業省が公表した「日本・米国・中国3ヵ国間の越境EC市場規模」によると、各国間の越境EC市場規模は下図のようになっています。

越境EC 市場規模

出典元:令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)

まず、日本の越境BtoC-EC(米国・中国)から見ていきましょう。総市場規模は3,416億円で、米国経由の市場規模は3,076億円、中国経由の市場規模は340億円という結果になりました。

次に、米国の越境BtoC-EC(日本・中国)の総市場規模は1兆7,108億円で、日本経由の市場規模は9,727億円、中国経由の市場規模は7,382億円です。

もっとも規模が大きいのが中国の越境BtoC-EC(日本・米国)で、総市場規模は4兆2,617億円にのぼります。そのうち、日本経由の市場規模は1兆9,499億円、米国経由の市場規模は2兆3,119億円となりました。

カッコ内の前年比を見てもわかる通り、越境ECの市場規模は日本・米国・中国いずれの国でも増加しています。中でも、中国の消費者が越境ECによって日本の事業者から購入した金額は前年比17.8%と、大きく伸びていることがわかります。

越境ECはインバウンドを上回っている

経済産業省の統計によれば、越境ECは2014年の時点でインバウンドを上回る市場規模であることがわかっています。

2014年に中国人によるインバウンド購入金額は4,020億円。一方で、中国人が日本から越境ECによって購入した商品の金額は6,064億円と、越境ECは数年前から高い人気があったのです。

中国では2019年1月に「電商法」という新しい制度が施行され、非正規商品を売る個人バイヤーが厳しく取り締まられましたが、このことも越境ECの市場規模拡大に影響していると考えられるでしょう。

また、EUでもEPA(日本・EU経済連携協定)によって日本酒にかかる関税が撤廃されました。このことからも、市場のさらなる拡大が期待されています。

越境ECの市場拡大の背景

Mobile shopper

ここからは、越境ECの市場拡大の背景について詳しく見ていきましょう。市場が大きく伸びを見せている理由について詳しく知っておけば、越境EC導入時の計画にも役立てられます。

インターネットの普及

まず挙げられるのが、インターネットインフラが整ったことです。世界のインターネット普及率は年々増加しており、2019年の時点で57%と、前年に比べ10%高い数値となりました。(日本のインターネット普及率は94%)特に大きく普及したのが、ASEAN地域、アフリカ新興国などです。

また、スマートフォンの普及によって、いつでもどこでも自分の好きなときに、手軽に買い物ができるようになったことも影響しているでしょう。

中国でいえば、2016年の中国有名ECモール「京東(JD.com)」の注文のおよそ8割は携帯端末からのものだったとされており、他のECモールやECサイトでも同様の傾向が見られると予想できます。

コストや手間が削減可能

新しい販路を広げたい、新規顧客を獲得したいと思っても、海外で実店舗を出店しようとすれば現地スタッフの人件費、家賃や出店申請の手間など、手間やコストがかかります。一方、越境ECの場合は、実店舗を持たず、オンラインで海外の顧客を獲得可能です。

自社で越境ECサイトのシステムを構築する以外にも、海外のモールに出店・出品する方法や、代行業者を経由する方法などがあるため、自社のビジネスに合った方法で、初期費用を抑えて始められます。

海外へビジネスを展開しようと考えているのであれば、まずは越境ECを導入し、様子を見たうえで実店舗の準備を計画するのもいいかもしれません。

商圏を拡大できる

今後、日本の消費は低下していくと考えられています。また、すでに日本国内で広く知られている企業の場合、新規顧客の獲得とはまた別の施策を講じる必要があるでしょう。

越境ECであれば、まだ自分たちの商品やサービスを知らない消費者に向けてアピールすることで、新規顧客獲得も見込めます。世界にはなかなか日本の商品が購入できない国や、潜在的な顧客が多い国もたくさんあります。

日本にいながら、インターネットを介して海外市場を開拓できるのは越境ECの大きな魅力といえるでしょう。

日本や他国製品への信頼

中国では、経済成長によって富裕層が増加しました。しかし、買い物をしようにも中国では偽物や粗悪品が横行しており、自国の商品に対する満足度が低い傾向にあります。そこで目を向けたのが、海外の製品です。

日本の製品は「メイドインジャパン」として質の高さが評価されており、世界的な信頼があります。信頼できるアイテムや質の高い商品を求める消費者が増えていることも、越境ECの消費が増加している理由です。

日本に観光に来たインバウンドの中国人観光客が数多くの商品を買う「爆買い」が話題になったことがありますが、現在では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でインバウンドは激減。その需要が越境ECにスライドしたというわけです。

越境EC 市場規模

出典元:平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)

上の円グラフは、経済産業省が公表した「平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」より、越境ECで日本の商品を購入したことがある中国の消費者の数です。65%以上が越境ECによって日本からの輸入品を購入しており、高い人気があることがわかります。

越境EC 市場規模

出典元:平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)

また、同調査によれば、中国の消費者は越境ECで日本から商品を購入する際、「品質」を最も重視し、次いで「ブランド」「安全性」を重視していることがわかっています。

日本国内で類似商品との価格競争や差別化が激化する中、越境ECで求められているのは価格以上に、商品やサービスの確かな品質や安全性、魅力を感じるブランドかどうかという点なのです。

リピート購入

日本に観光に訪れる外国人の数は年々増えており、2015年には1,970万人だったのが、2018年には3,190万人となり、62%も増加しています。そして、この9割近くを占めていたのがアジア圏からのインバウンド観光客です。

日本で販売されている商品への興味関心が強く、買い物を目的とした訪日も多かったようです。コロナによってインバウンドは大きく減りましたが、その一方で、越境ECによるリピート購入が増加しました。

日本に旅行に来たときに実際に手に取って体験し、「これはいい。また使い続けたい」と思ったものをインターネットで検索し、越境ECで購入するファンも増加しています。

まとめ

越境ECは年々市場が拡大しており、2027年には約541兆円(4兆8,561億USドル)にまで拡大すると予想されています。

ECの普及・需要は日本国内でも世界でも高まっており、拠点を持たずにさまざまな国や地域で自社商品・サービスを展開できる越境ECは、小売企業やメーカーを中心に活用が進んでいます。

越境ECは、手間やコストを抑えられるだけでなく、海外という大きな市場に自社商品やサービスの魅力を発信し、新たな販路の開拓や新規顧客の獲得が可能な戦略です。

商品やブランドの歴史や開発ストーリー、メイドインジャパンなどの「付加価値で勝負できる」ことも越境ECの特徴であり、大きな魅力。ただし、国境というハードルを超える難しさもあります。言語や法律、規制、文化の違いなど、それぞれの国に柔軟に対応できるよう、越境EC導入の際には入念な準備を行いましょう。

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