越境ECとは、あらゆる言語、あらゆる通貨に対応したオンラインショッピングが可能になった電子取引のことを指します。2014年から2018年までの4年間、越境ECの市場規模の成長率は日本で1.4倍でした。さらにアメリカでは1.6倍、中国では2.3倍という結果が出ています。
2018年での越境ECでの全世界市場規模はおよそ74兆円となっています。これはドル換算するとおよそ4000億ドルになります。これほどの成長率を誇る越境ECですが、越境ECと一般貿易との違いはなんでしょうか。
今回は越境ECにおける物流方法や一般貿易との違いを解説し、さらに、越境ECを利用することで起こりうるトラブル事例もいくつか紹介していきます。
目次
中国向け越境ECの物流方法について
ここでは、中国向けの越境ECにおける物流方法について説明していきます。
直送モデル
中国人に対して、直接的に販売したり郵送したりする方法を「直送モデル」と呼びます。直送モデルの場合、ECサイトへ出品した商品を中国人が購入すると、日本側から国際宅配便を使って購入した人に商品を直接的に配送するという方法が一般的です。
リードタイムが少し長くなるというデメリットがありますが、「直送モデル」は中国人の消費者には積極的に受け入れられています。
直送モデルを利用するメリットとしては、商品を日本から発送するため、消費者側からの直接発送という面での安心感、販売する側からは商品のブランディングを考えた際にも有効的です。
注文の受付をするたびに発送を行うため在庫の管理がしやすく、その点も直送モデルを利用する上での大きな利点といえます。
保税区モデル
「保税区モデル」とは、保税区を活用した越境ECのことです。保税区モデルでは、最初から中国の保税区に対して一気に商品を送り、中国内部の保税区で商品を保管します。
そして、注文を受けるごとに通関の手続きをして、保税区から商品を出荷する仕組みとなっています。保管している期間に税が課されることはありません。
直送モデルと比べると、中国内部から商品を出荷する方法を取るため、保税区モデルの方がリードタイムを短くすることが可能です。直送モデルでは、輸入に係る税金を輸入者である消費者が税金を納めます。それに対し、保税区モデルでは中国では販売する側がまとめてさまざまな税金を代理で納付します。
倉庫に商品を保管する際の手数料などがかかりますが、注文してから発送が完了するまで、中国内部で完結するという特徴があります。保税区モデルは商品の販売量が多いという場合に有効的に活用できるモデルとなっています。
越境ECと一般貿易ってどんな違いがあるの?
越境ECと一般貿易の間にある違いは、「税金の制度」と「輸入規制に関すること」の観点から見るとわかりやすいです。
一般貿易と越境ECでは税制・輸入規制が大きく変動します。
基本的に、一般貿易よりも越境ECの方が価格の低い税金が課せられます。また、一般貿易の際に必要となる法定での検査や審査の認定通過が、越境ECの場合は不要であるというケースがあります。
健康食品、化粧品や洗剤など、一般貿易では中国への輸出が厳しい商品でも、越境ECを通じて商品を売り出す場合は販売可能な場合があります。また、越境ECで商取引を行う場合は比較的短期間で手続きが終えられ、低コストでの販売が可能です。
化粧品を例に挙げると、越境ECでは化粧品の液体成分の申請書は簡潔でシンプルな内容でも審査が通過できるようになっていて、中国に対応した成分表や申請書の作成などが比較的楽に完結させることが可能です。
一般貿易と比べると越境ECの方が通関に必要な業務も少ない項目で済みます。
越境ECを利用する上で起こりうるトラブル事例について
ここでは、越境ECを利用するうえで起こり得るトラブル事例について、以下の三つの観点から解説していきます。
- 配送に関すること
- 通関に関すること
- 言語に関すること
それでは、以下から見ていきましょう。
配送に関すること
日本はインフラが整備されているため、オンラインショッピングをした場合に自身が希望した日に荷物が届きます。しかし、海外では必ずしもそうなるとは限りません。
消費者の安心度が国内と海外ではかなり変わってしまうのです。
荷物の破損が起こったり、配送途中で紛失したり、配達の遅延が起こったりと、配送に関するトラブルはさまざまです。
海外の配達業者に任せなくてはならない場合もあり、日本国内のインフラでは対応しきれない部分もあるため、 利用規約などを利用しリスクの軽減を図ることも大切です。
通関に関すること
商品を輸出入するためには「関税」を避けては通れません。関税制度は国によって変動するため、あらかじめどのような規定があるのかを調べておく必要があります。
通関の際に想定外に時間がかかってしまったことで配達が遅れたり、関税が想定以上にかかってしまったということが原因で、商品購入者が受取を拒むことも考えられます。「関税は商品の受取手が責任を追わなくてはいけない」ということを消費者側にもしっかり伝えておく必要があります。
言語に関すること
越境ECサイトをつくる場合は、越境EC対象国に対応した言語の翻訳が必要になります。カスタマーサービスも現地の言語に合わせる必要があります。
また、その方法も国によって異なります。
何かトラブルが起こった際に電話やメールでの受付をするのが日本では一般的ですが、海外ではそのような問い合わせ方法はあまり見られず、Webサイトに添付されているチャットコーナーやアプリを使っての問い合わせがほとんどです。
越境ECを利用する際は、多様な言語への即時対応ができる状態であることを条件として、運営の体制をしっかりと整えていく必要があります。
越境ECをさらに拡大するために
越境ECは近年注目を集め始めている電子取引ツールですが、さらなる拡大を目指す際にはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
ここでは、以下の項目に焦点を当て、解説していきます。
- ターゲットの需要調査
- より豊富な言語への対応
- 配送方法の多様化
- 確実な情報の伝達
- トラブル対応の多様化
- 商品プロモーションにSNSの有効活用
それでは、以下から見ていきましょう。
ターゲットの需要調査
同じ世代に生きているとはいえ、国によってその好みや趣味は異なります。どのような時期にどのような商品が売れるのかを国ごとに調査し、時期や季節に合わせてキャンペーンやセールを行うことも経営戦略の上では重要になります。
より豊富な言語への対応
自分の会社で越境ECサイトを作り上げる場合は、さまざまな言語に対応したものにしなくてはなりません。
各言語に対応できる人材を確保する必要があり、そうなると人件費がかかってしまうのでコストも高くなります。
配送方法の多様化
消費者が安心して商品を購入できる環境をつくるには、配送などのサービスが充実している必要があります。
商品を購入する際に手数料や配送料が高くなると、企業側からしても利益として出る金額が少なくなってしまいます。ですから、収益化を図るためにも配送サービスには工夫が必要です。
越境ECを利用する際は、各国に応じた決済方法や配送手段を確保しておかなければなりません。
確実な情報の伝達
確実な情報を伝えるために、関税の知識が必要だったり、商品が注文されてから到着するまでにかかる費用や日数をあらかじめ把握しておく必要があります。
商品購入者を混乱させないためにも、そのような適切な情報の保持は必要不可欠です。また、海外へ商品を送り出す場合には、通関に関わる審査が存在します。商品の種類・金額に合わせた税金が発生するのです。
基本的に関税というのは商品購入者が支払うことになっているので、その点についても売主・買主双方の理解が必要です。
トラブル対応の多様化
国内に向けた発送に関しても何らかのトラブルは起こり得ますが、カスタマーサービスが充実している日本では、基本的にどのような問題でもすぐに対応し解決することができます。
しかし、それが外国に向けた発送となると、使用している言語や文化のギャップでスムーズな対応ができなくなる可能性があります。
梱包を厳重に強化させ、荷物がどのような流れで行き届くようになっているのかを把握することが大切です。
商品プロモーションにSNSの有効活用
商品の宣伝のために、SNSを上手に活用していく必要があります。
世界中のユーザーが集まっているSNSを利用すれば、確実に商品やその商品を売る企業の認知度は上がりますし、売り上げもそれに比例して高くなっていきます。
SNSを活用して、特定の商品を売るターゲットを絞り、できるだけ低いコストで商品を販売できる体制を整えていくことができれば、さらなる収益向上を期待することができます。
また、越境ECを利用して経営をしていくためには、経営戦略と消費に関する分析が必要不可欠になってきます。
自分の会社の商品を海外のどこに、そしてどのような方々に売り出したいのかというターゲットの選定をはっきり行い、越境ECでの商取引に向けた準備にしっかり時間をかけていくことが必要なのです。
まとめ
今回は、中国向けの越境ECという観点から、越境ECにおける物流方法、そして一般貿易との違いを解説していきました。さらに、越境ECを利用することで起こりうるトラブル事例もいくつか紹介していきました。
越境ECを始めたいと思っている場合は、「物流」という観点から考え、いかにその体制を充実させられるか、という点が重要になってきます。安心できる人材に業務を委託し、信頼関係を築いている仕事仲間と、越境ECを利用していきましょう。