インターネットのインフラが整備されてきた現代、スマートフォンの普及も重なって、海外に住んでいても、簡単に他の国の商品を購入できる世の中になってきました。
また、近年では、会社の売上向上を目指すためにも「越境EC」という制度を利用する企業も増えてきました。
今回は、そんな越境ECに関する概要を説明し、輸出入に関する税制についても解説を交えながら越境ECのことを詳しく紹介していきます。
目次
越境ECのメリット・デメリット
ここでは、越境ECに関する概要をメリット・デメリットに分けて説明していきます。
メリット
まずは、越境ECを利用する上でのメリットについて、以下の項目に焦点を当てて解説していきます。
- 海外の顧客を獲得できる
- 海外に向けた販売商品の品数が増える
- 低コストでの運営が可能
それでは、一つ一つ見ていきましょう。
海外の顧客を獲得できる
越境ECを利用することで、日本国内に限らず、国外に向けても商品を売り出すことができます。
最近ではスマートフォンなどの電子機器が流行したため、海外のサイトに入ることが比較的簡単になりました。
このような背景から、越境ECを利用して商品を販売すれば、確実に海外の人々が日本の商品に目をつける機会が増えるということになるため、売上向上も期待できます。
特に日本の漫画やアニメなどのサブカルチャーに興味を示す海外の方も多いので、そのような人々をターゲットにして商品をアピールすることができれば、企業のさらなる売上発展にも繋がります。
海外に向けた販売商品の品数が増える
海外との貿易に際して取り扱いができない商品についても、越境ECの利用による郵送という形を取れば、取引可能となる商品が複数存在しています。
しかし、取引ができる品物というのは、国によって変わってくるため注意が必要です。
将来的に法律の改訂が起こる可能性もあるので、随時国ごとの決まり事を確認しておくことが重要です。
海外の消費者にとっても、海外在住の日本人にとっても、海外貿易では手に入らないような商品が、越境ECを通じた商品購入によって望み通り手元に届くというのは、かなり魅力的なポイントであると言えます。
低コストでの運営が可能
日本にしかない店舗を海外にも建設しようとすると、莫大な費用と時間がかかってしまいます。海外への実店舗の建設は、商品の在庫を考えた倉庫の設置も考慮しなくてはなりませんし、かなり大きなリスクを伴うことになります。
さらには、土地の購入やテナント代、内装の拡充や、建物の修理代、さらに仕入れを怠ってしまわないような配慮や現地の言語に対応した人材の確保、営業維持のための人件費など諸々、実店舗の経営には非常に多くの手間がかかります。
よほど名のある大手企業などでない限りは、上記の項目を全て満たした運営は厳しいです。
しかし、越境ECを利用すれば、海外に実店舗を建設する必要もなく、国外に向けて商品を売り出すことができます。
手数料などの細かい出費は存在しますが、越境ECによる商品販売を行うことで、実店舗を持つよりも現実的なビジネス展開が期待できます。
デメリット
ここでは、越境ECを利用する上で発生するデメリットについて、以下の項目に焦点を当てて解説していきます。
- 多様な言語への翻訳が必須
- 膨大な知識が求められる
- さまざまな決済方法への対応が必要
それでは、以下から一つ一つ見ていきましょう。
多様な言語への翻訳が必須
越境ECを始めるうえで、大きな難関となるのは「言語」ではないのでしょうか。越境ECはあらゆる国に商品を売り出すことが可能ですので、現地の言語を使用してビジネスを進めていく必要があります。
トップページに絞らず、商品ページや、カスタマーサポートの対応においても、その国に適応した翻訳が必要不可欠なのです。
自動翻訳によって生成された違和感のある言語でつくられたサイトは、企業の信頼度を下げる十分な材料になります。そのため、正確な翻訳作業が必要不可欠であり、そのための人材を確保する必要があります。
現地の言葉を話すことができる翻訳代行者などを複数人頼ることで解決しますが、そのための人件費を削減させることになるという点には注意が必要です。
膨大な知識が求められる
膨大な知識というのは、「物流」「関税」、そして「配送」などを含んだものを指します。
日本の商取引の強みは、カスタマーサービスが充実していて迅速なトラブル解決が図れるところであったり、企業の信頼度の高さによる消費者側の安心感が非常に大きいという点が挙げられますが、それを海外販売においても十分に活かすためには、確実で多様な知識が必要となるのです。
商品の配送をよりスムーズに行う方法や、関税に引っかからない品数の把握、送料を最小限に抑える方法などをあらかじめ確認しておく必要があります。
また、国によっては輸入が制限されている商品もありますので、注意が必要です。
曖昧な知識で海外との取引を行い、取り返しのつかないようなトラブルを招かないためにも、必要な情報はすべてインプットし、法律の改訂などにも対応できる柔軟さが必要となってきます。
さまざまな決済方法への対応が必要
越境ECを利用して商品を売り出す際、先進国を主なターゲットにしたい場合は、クレジットによる決済方法が利用できるため、それほど大きな問題はありません。
しかし、決済する際にクレジットカードを利用できる国は限られていますので、さらなる売上向上を目指した場合は、当然クレジットカード以外の決済方法も用意しておく必要があります。現金に限らず、国ごとに頻繁に利用されている電子マネーの知識も蓄えておくとよいでしょう。
越境ECにおける物流について
ここでは、越境ECにおける物流モデルについて紹介したあと、輸出入に関する税制の概要を解説していきます。
基幹となる物流モデル2つ
一般的に、日本から中国の顧客に対して越境ECを通じて商品を売り出すという状況に焦点を当てた場合、大きく分けて2つの物流モデルが存在します。
一つは、「直送モデル」で、もう一方が「保税区モデル」です。
「直送モデル」というのは、越境ECのサイトに出品した商品を中国の顧客が購入した際に、日本から国際宅配便というのを利用して直接配送する方法のことを指します。
「保税区モデル」というのは、事前に中国の保税区に向けて商品を輸送しておき、その保税区で商品を保管・管理を行い、注文が入るとその保税区から通関手続きをして商品が出荷される方法のことを指します。
越境ECでの輸出入に関する一般貿易との税制の違いについて
ここでは、中国向けの商品を輸出入する際の税制について、どのような税金が必要となるのかを説明していきます。
まず、中国向けの商品を輸出する際に必要な税金は以下の四つに分けられます。
- 関税
- 増値税
- 消費税
- 行郵(こうゆう)税
それでは、一つ一つ簡単に説明していきます。
関税
関税は、中国国内に入る商品に対して中国政府が課す税金のことです。
増値税
増値税というのは、流通の段階で商品に対して課される税金のことで、日本の消費税に近いものです。
基本税率は17%となっていますが、生活インフラとなる穀物や食用油、天然ガスなどの一部特別な商品に対しては、低減税率13%となります。
消費税
消費税というのは、贅沢品などや一部の特定嗜好品に課す税金です。工場から出荷される時点、もしくは輸入の時点で税金が課されます。
日本の酒税と似通うもので、品物によっても変わりますが、およそ3〜45%が課税されることになります。
行郵(こうゆう)税
行郵税というのは、個人輸入物品に対して課される税金で、商品のジャンル別に税率が異なります。行郵税の総額が50元(中国の通貨)以下となる場合には、免税措置が適用されます。
越境ECを利用する際はこの行郵税というのが課税され、一般貿易とは別に越境EC税と呼ばれる税制が制定されています。そして、行郵税以外の関税・増値税・消費税の3点は、一般貿易として日本から中国に対して商品を輸出する際に納めなければならない税金となっています。
また、直送モデルの場合は、行郵税通関と呼ばれるものと、保税区モデルと同じ税率が適用される三単合一と呼ばれる二つの税制が存在します。
2019年4月9日以降から行郵税の税率は商品別に50%、20%、13%というように分かれています。そして、前述した通り、行郵税の総額が50元(中国の通貨)以下となる場合には、免税措置が適用されます。
書籍や新聞、パソコン、食品などの商品に対しては13%、スポーツ用品や自転車などには20%、たばこやお酒、ゴルフ用品に対しては50%の税率が適用されます。また、三単合一の場合における直送モデルは、保税区モデルと同等の税率が適用されます。
三単合一とは、注文に関する情報、そして支払いに関する情報、輸送に関する情報の3つのデータが連携された通関システムのことを指します。中国の政府が発行しているポジティブリストに記載がある商品のみに適応されることになります。
飲料品や食品、日用品などに課される税率は11.2%で、貴金属に対しては20.2%の税率が適用されます。
まとめ
今回は、越境ECに関する概要を説明し、輸出入に関する税制についても解説を交えながら越境ECのことを詳しく紹介していきました。最近では、日本でも越境ECの利用が頻繁に行われ、自社ビジネス発展のために越境ECを有効的に利用する企業も増えてきています。
日本の製品は信頼度も高く品質もよいため、海外の顧客からの評価も高いです。オンライン上でもそのような日本製品の適切なアピールができれば、これからもさらなる越境ECの発展が望めるのではないのでしょうか。