越境ECのターゲットは中国?食品がEC化に適さない理由3点

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新型コロナウイルスによる影響で、ステイホーム中でも娯楽品を求めてオンラインショッピングをする人々が増えてきました。2021年の1月と2月におけるアメリカECの売上は、合計1210億ドル(日本円でいうとおよそ13兆2130億円)であり、2020年と比較しても34%増の成長率を誇っています。

日本国内で製造される医療薬品や化粧品、食品、家電等はとくに中国において注目を集めていて、その商取引を実現しているシステムが「越境EC」と呼ばれるものです。今回は、食品取引をおもに将来的な中国向け越境ECについて解説していきます。

越境ECの商材としての食品の展望を考えてみる

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越境ECではさまざまな商品が販売されていますが、その中でも食品関係の売上は特別高いわけではありません。それはなぜでしょうか。

ここでは、食品関係がなぜ越境ECに向いていないのかということを詳しく説明していきます。

主に以下の3点に着目して解説します。

  • 食品とECの相性問題
  • 利便性の観点
  • 配送料の問題

それでは、以下から詳しく見ていきましょう。

食品とECの相性問題

食品とECの相性問題について触れる前に、一つ具体例を挙げてみましょう。例えば、家電関係のECサイトの場合、型番さえ合っていれば、どこの店に行こうがどんな人が接客しようが、その商品のクオリティーが下がることがありません。

そのため、家電業界とECサイトはかなり相性がよく、実際に家電関係のEC化率は37.45%と高い数値を誇っています。

家電関係と比較して、野菜や肉、魚などのいわゆる生鮮食品と呼ばれるものは、実際に目で見たり触ったりすることでその鮮度を確かめられることが多いため、商品に触れることの出来ないオンラインショッピングには向いていません。

上記のような理由で、生鮮食品などを購入する際は、ECサイトで買い物をするより、実店舗に足を運んで商品を購入する消費者が多いのです。

2016年の1月に行われた日本政策金融公庫による調査では、農林水産物やその加工品をネットで販売して購入した消費者の3人に1人は、販売事業者に対して「食品を販売する際に生産者・生産地などの情報を提供して欲しい」と思っているという結果が出ています。

また、生鮮食品は、鮮度を保ったままいち早く消費者の元へ配達する必要があるので、鮮度がより良い状態で配送が行えることが前提となる必要があります。

そのためには、食品に特化した物流拠点を持つことが何よりも重要です。

しかし、資金や人脈の関係で、食品に特化した物流拠点を築けるのは大手企業に限ります。物流拠点を築きづらいことが食品のEC化を妨害している理由の一つです。

一方で、地方で売り出されている嗜好品としての名産食品に関しては、「前に食べたことがあって美味しかった」「いい素材が使われているから食べたい」「クチコミで高評価が多いから」という理由でECサイトで購入する消費者は少なからず存在します。

利便性の観点

まず、消費者はオンラインで買い物ができるという点から、ECサイトの利便性を考慮してオンラインショッピングをしています。

Amazonなどは非常によい例ですが、あらかじめクレジットカードやお届け先の住所などの情報を盛り込んでおくだけで、欲しい商品がワンタップで購入できてしまうのです。

しかし、食品という観点から見た場合、ほとんどの消費者は自宅から徒歩圏内のスーパーやコンビニまで足を運び、ECサイトで買わずとも手軽に生鮮食品を手に入れることが可能なのです。

ECサイトで買っても配送が完了するまで時間がかかることや、実際に手にとって鮮度が確認できない点を考慮すると、わざわざECサイトで食品を買うメリットはありません。

配送料の問題

楽天市場の「あす楽」やAmazon Primeなどの一部サービスでは、条件を満たすことで配送料が無料になることがありますが、実際には完全無料なのではなく、ネット事業者が配送料を負担しているのです。

しかし、佐川や日本郵便各社、ヤマトが配送サービスを値上げしたことから、EC事業者に対する影響も大きく、今まで配送料を無料と設定していたサービスも次々と廃止へと踏み切っています。

配送料の値上げなどの背景もあり、消費者はまとまった量の食品を買う場合は、スーパーなどで買った方が配送料の負担もなく、経済的にも利便性の面でも大変有効的なのです。

実店舗と比較してもECサイトでの商品販売では価格競争力の面で劣ってしまい、食品ECを使う消費者が増えづらい状況です。

しかし、この状況も新型コロナウイルスの拡大により、オンラインショッピングの需要も増えてきたため、少しずつ変わりつつあります。

越境ECで食品が扱いやすい状況ってどんなとき?

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食品を海外に向けて販売する際に特に重要視される要素はなんでしょうか。食品販売では、ペットボトル飲料やお酒類などは重量や体積の大きさを考慮すると海外への販売にはそれほど適さないと思います。食品を売る越境ECの場合は、重量が軽くサイズの小さな菓子類、他にもサプリメント等を取り扱う越境EC事業者が少なくないのです。

お菓子やサプリメント等は賞味期限が長期のものが多く、常温での配送ができるため、越境ECでの買い物でよく利用されます。

賞味期限の観点から考えると、乾麺やドライフルーツ等も扱いやすい食品です。

食品を越境ECで売り出すために特に重要なことは、以下の4つの項目です。

  • 商品がとても軽いこと
  • 体積が小さいこと
  • 賞味期限が長期のもの
  • 温度や鮮度の管理が楽なこと

以上の4項目を満たす食品が越境ECで販売されやすいといえます。

食品ECのターゲットは中国?

最近では、日本における食品関係の商品については、中国向けの越境ECが拡大しています。

新型コロナウイルスによるオンラインショッピングの需要が増加し越境ECの利用が急激に増え続けていること、そして越境ECに関する規制緩和が中国にて行われたことなどが、中国向け越境ECの利用急増の要因の一つとして挙げられるでしょう。

2019年の中国の報告書では、日本から越境ECを通じて輸入した商品の中でも「食品・飲料」はおよそ5000億円(311億元)で二番手の地位を確立しており、特に粉ミルクや生鮮品などの輸入が発展しています。

中国の越境ECに関する規制緩和について

ここでは、越境ECにおいて中国でどのような点が規制緩和されたのかを以下の項目に従って紹介していきます。

  • 許可手続きについて
  • 関税について
  • 商品ラベルについて

それでは、以下から簡単に見ていきましょう。

許可手続きについて

規制緩和の一環としては、食料や野菜、油、果実やミルク類、肉類、海産品等の規制品に関係する許可手続きが、越境ECを利用した場合のみ、2〜6ヶ月に短縮されたことなどが挙げられます。

また、中国政府が公表している輸入リストというものに記載がある商品であれば、一般貿易では許可が必要な商品であっても、越境ECでは輸入許可や登録が必要ありません。

関税について

規制緩和のもう一つは、関税がかからなくなったという点です。

越境ECを通じた商取引であれば無関税でよくなり、付加価値税等の6.3%と非常に低い税率で商品を届けることが可能になりました。

商品ラベルについて

通常の一般貿易などでは、商品を販売する際にさまざまな国に対応した言語に沿った商品のラベルが必要です。

しかし、中国の規制緩和により、越境ECを通じた商取引の場合は、中国語記載の商品ラベルを貼り付ける必要がなくなったため、商品バーコードのみの表示で十分になりました。

中国向けの越境ECで有名なものとして化粧品や家電、衣類などといった商品が挙げられますが、上記の規制緩和により、それらの商品に絞らず、日本の農産物などの食品についてもビジネス拡大のチャンスが生じたということになります。

まとめ

今回は越境ECを通じた食品売買について詳しく紹介し、さらに中国向け越境ECの可能性について解説していきました。越境ECを通じて食品を売り出すためには、ターゲットの選定が重要です。

そのためには、ターゲットとなる国の法律や、輸入が禁止されている商品、許可が必要な事項、関税などの物流に関する知識が必要不可欠です。また、ビジネス発展のためにも、あらゆるトラブルに対応できる体制をしっかり整えた上で越境ECを始めるようにしましょう。

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