「百貨店が越境ECに参入する意味はあるの?」「百貨店が越境ECに参入した事例を知りたい」
このような疑問や悩みをお持ちではありませんか?越境ECの市場規模は年々拡大を続けているため、海外に向けて商品を販売すれば、大きなシェアを獲得できるチャンスがあります。実際、百貨店が越境ECに参入している事例は数多く存在します。
しかし、越境ECで成功を収めるのは容易ではありません。国内と国外では法律やルールが異なるため、あらかじめ現地の内部事情を理解しておく必要があります。
そこで本記事では、百貨店が越境ECを活用する方法、これまで百貨店が参入した事例を解説します。最後までご覧になれば、百貨店が越境ECに参入すべき理由がわかり、その上で自社に適した参入方法を見つけられるはずです。
目次
百貨店は越境ECに参入すべき?
越境ECの市場規模は、世界的に拡大し続けています。新型コロナウイルス感染症の流行やスマートフォンの普及に伴い、中国・アメリカをはじめとした各国が越境ECを活用。
また、経済産業省が公表した2020年度の「電子商取引に関する市場調査」によれば、2019年における世界の越境EC市場規模は7,800億米ドルだと推計されており、2026年には4兆8,200億米ドルまで拡大すると予測されています。
日本でも越境ECの市場規模が拡大している傾向にあるため、多くの企業が越境ECの活用を始めています。この傾向は百貨店も例外ではありません。
主に、以下のような有名百貨店が越境ECに参入しています。
- 東急百貨店
- 近鉄百貨店
- 阪急百貨店
- 小田急百貨
- 三越伊勢丹
百貨店で販売する商品と越境ECは相性が良いため、海外のシェアを大量に獲得できるチャンスがあります。今後の盛り上がりに備えて、早めに越境ECに参入することをおすすめします。
百貨店が越境ECを活用する具体的な方法
「実店舗で販売していた百貨店が越境ECに参入するのは難しいのでは?」と、考える方も少なくないでしょう。
確かに、海外向けに商品を販売する越境ECでは、国内向けの販売とは法律やルールが異なります。それだけでなく、販売数を伸ばすためには、進出する国の言語を理解しておく必要があります。
そのほか、顧客対応の仕方やニーズが異なることから、思いも寄らないトラブルを招いてしまうこともあるでしょう。
しかし、目的やビジネスモデルに合わせて越境ECを展開すれば、必ずしも難しいというわけではありません。また、最初はスモールスタートで、徐々に規模を大きくさせるという方法も考えられます。
なお、越境ECに参入する方法としては、大きく分けて以下の3つがあげられます。
参入方法 | 特徴 |
自社ECを立ち上げる | ・最も難易度の高い方法 ・ECサイトのデザインを自由に決められる ・自社商品のみを訴求できるため、顧客と継続的な関係を持てる |
国内モールを活用する | ・出店のハードルが低い傾向にある ・自社のデザインやシステムを反映できない ・手数料や初期費用がかかる |
海外モールを活用する | ・現地の顧客に直接アプローチできる ・進出する国の言語理解が必要 ・自社のデザインやシステムを反映できない ・手数料や初期費用がかかる |
自社の予算や目的に応じて、参入しやすい方法を選択しましょう。百貨店が越境ECに参入する場合、これら参入方法も大切ですが、その後の長期的な運営も重要となります。特に注力すべきは、越境ECのマーケティングです。
百貨店が越境ECを活用した成功事例では、いずれも効果的なマーケティングを実施しています。効果的に自社商品をアプローチすることで、販売数の増加や売上向上などのメリットが見込めるでしょう。
百貨店が越境ECに参入した5つの事例
越境ECへの参入方法がわかったところで、実際に百貨店が参入した事例を5つ紹介します。参入した事例を確認することで、成功するためのヒントが見つかるはずです。
東急百貨店が「eBay」に出店
株式会社東急百貨店は、2020年11月に日本法人である「イーベイ・ジャパン株式会社」を通じて、世界最大規模のECモール「eBay(イーベイ)」に出店しました。これは、日本の百貨店で初めての公式越境ECショップ開設です。
そもそもeBayは、インターネットオークションで世界最多の利用者数を誇ります。アメリカを中心に展開しており、そのEC規模はAmazonやWalmartに匹敵するほどです。ヨーロッパやオーストラリア、中国など、世界190か国に展開しているため、東急百貨店はeBayに出店したことで、より多くの販売機会が見込めるようになりました。
なお、eBayには東急百貨店がこれまで培ってきた目利き力、編集力を活かした伝統工芸品をはじめ、海外で人気が集まっている日本製品を約150点出品しました。
近鉄百貨店が「京東全球購」に出店
中国市場を牽引するECサイト「京東商城(JD.com)」。そのECサイトを運営する京東集団と株式会社近鉄百貨店は、2018年7月に戦略的業務提携を締結し、近鉄百貨店が越境ECサイト「京東全球購(JD Worldwide)」に海外旗艦店として初出店しました。
今回出店した越境ECでは、コスメやスキンケア、ベビーマタニティ、日用家庭用品など、数百種類の商品を販売。オフラインでも宣伝活動を積極的に行い、より多くの中国消費者にアプローチしました。
積極的にアプローチしたこともあり、近鉄百貨店には20万人弱の訪日中国人が来店しました。それに伴い、2017年における阿倍野本店の中国観光客の年度消費額は、200億円以上を超えています。
阪急百貨店が「豌豆公主」に出店
株式会社阪急阪神百貨店は、中国向け越境EC「豌豆公主(ワンドウ)」に2017年8月より出店を開始しました。
定番商品や阪急うめだ本店でしか購入できない商品など、日本の食品を中国消費者向けに出品。国内はもちろんのこと、中国からの来店客にも人気が高く、連日にぎわいをみせています。
また、越境ECプラットフォーム「豌豆公主」を運営するインアゴーラ株式会社は、阪急百貨店が運営する通販サイト「HANKYU FOOD」で販売する「神戸風月堂」の銘菓「ゴーフル」の取り扱いを2019年7月より開始。
さらなるシェア獲得を求め、阪急百貨店は中国向け越境EC運営を積極的に行っています。
小田急百貨が「橙感」を通じて越境ECに参入
小田急百貨は、WeChatミニプログラム「橙感(チェンガン)」を通じた中国向け越境ECを、2020年9月より本格的にスタートしました。
本年5月から実験的に海外向け販売を実施していましたが、9月からは当社ゾーンを設けて、商品カテゴリーを増やした上で展開しています。展開する商品カテゴリーは、化粧品やベビー用品、生活雑貨、アクセサリーなど、合計180点の商品数からスタート。また、中国向け越境EC市場では展開されていないブランドやアクセサリーを販売するなど、競合他社との差別化を図り、中国市場での認知度を高めています。
越境ECの利用方法は少し特殊で、まずはWeChatをダウンロードし、検索で「橙感」と入力してミニプログラムを選択。その後、サイト上のグローバルナビゲーションから「新宿甄选特辑」を選択し、商品を注文するという流れです。
三越伊勢丹が「天猫国際」に出店
三越伊勢丹は2016年11月、アリババグループの「天猫国際(Tmall Global)」の大型キャンペーンに合わせて本格的な商品販売をスタートしました。戦略的パートナーとして旗艦店を出店し、三越伊勢丹グループの独自商品を中心に揃えています。
なお、百貨店社長の「大西 洋」氏は、天猫国際への出店について以下のように述べています。
「日本の安心・安全な商品を数多く取り揃え、ファッショントレンド衣料、質の高い雑貨アイテム、化粧品、ベビー用品をはじめ、オリジナル商品を販売する。今後は同サイトの限定商品や、人気の高い食品類も紹介し、お客の要望に応えるため、随時品揃えを充実させていく。」
引用元:三越伊勢丹/アリババ「天猫国際」出店、ブラックフライデーで本格展開 | 流通ニュース
さらに、11月にアリババグループが開催した「201611.11 Global Shopping Festival」では、天猫国際における国別流通総額で、日本が世界第1位を獲得しました。
また、三越伊勢丹は2018年の9月に、中国小売業最大手の京東集団と戦略的業務提携を締結しました。それに伴い、京東集団が運営する中国越境ECサイト「京東全球購(ジンドンゼンキュウコウ)」に、三越伊勢丹海外官方旗艦店をオープンしています。
まとめ
本記事では、百貨店が越境ECを活用する方法、百貨店が参入した事例を解説しました。
越境ECの市場規模は世界的に拡大を続けています。百貨店で販売される商品と越境ECは相性が良く、海外のシェアを大量に獲得できるチャンスがあります。ただし、日本国内向けの販売方法とは勝手が異なり、現地のルールや言語に応じて展開する必要があるため、思いも寄らないトラブルを招いてしまうこともあるでしょう。
これから越境ECへの取り組みを考えている方は、ぜひ本記事で解説した事例を参考にし、自社に適した参入方法を探してみてください。また、越境ECの運営に自信がない方は、運営代行会社に依頼するのも1つの手です。サイトの立ち上げから運営までサポートしてくれるため、予算に余裕がある方は検討してみてください。