近年では新型コロナウイルスによる「ステイホーム」の影響もあり、オンラインショッピングの需要が今まで以上に高まってきました。そこで今回は、中国の越境ECに注目し、2019年度からの中国越境ECの市場規模について解説していきます。
加えて、中国向けの越境EC拡大のためにどのような販売方法を取ればよいのかを紹介し、中国における有名越境ECサイトも簡単に紹介していきます。
目次
中国のEC市場規模について
ここでは、中国のEC市場規模について解説していきます。主に以下の項目に焦点を当てて紹介していきます。
- 中国のEC市場規模は世界最大規模?
- 中国ではどんな商品が人気なの?
それでは、一つ一つ見ていきましょう。
中国のEC市場規模は世界最大規模?
中国は、世界最大規模と呼ばれるほどのEC市場を持っています。
経済産業省の「令和元年度電子商取引に関する市場調査」の資料によると、2019年度の中国の市場規模は1.93兆ドルでした。1USドル=108円として日本の通貨に換算すると、1.93兆ドルはおよそ208兆円と同等の価値になります。
中国の市場は、日本の約10倍という規模になっているのです。
中国の越境EC利用者数は1億5,800万人へ
2020年における中国の越境ECの総輸出入額は28.7兆円に達するほどの金額となっており、そのうちの9.7兆円が外国からの輸入額となっています。
経済産業省による調査では、9.7兆円のうち1兆9499億円を日本から輸入していて、2019年と比べても17.8%の増加率が認められています。そして、9.7兆円のうち2兆3119億円をアメリカから輸入していて、2019年と比べて15.1%の増加率が見られます。
2019年の中国の越境ECを利用している人々の総数はおよそ1億5,400万人まで上昇し、2020年には1億5,800万人になりました。
中国の越境EC利用者数はなんと日本の人口を超えています。
中国の「独身の日」について
中国では毎年11月11日が訪れると「独身の日」としてECの特大セールが開催され、そこで歴史に残る記録的な商取引が行われます。
また、中国ではECモールのインパクトが非常に強く、自社サイトによる売り上げが極端に少ないのが特徴となっています。
現在でも中国は世界最大規模のEC市場規模となっておりますが、いまだに利用者数の増加が見られることから、将来的に見てもさらなる成長の見込みがあるということになります。
中国向けの越境ECを展開するだけで、ビジネス発展のチャンスが秘められているのです。
中国ではどんな商品が人気なの?
中国のEC市場ではどのような商品が人気なのでしょうか。
調査会社であるiiMedia Researchの調べによると、2021年時点で中国在住の消費者が越境ECで購入しているメインのカテゴリは次の通りになっています。
調査の中で最も購入率が高かった商品は「メイクアップ・美容関連商品」となっていて、全体の35.8%を占めることとなりました。
第2位は「健康食品・サプリメント商品」がランクインし、全体の31.2%を占める結果となっています。
また、次いで第3位には「シャンプー・ボディソープ・歯磨き粉に関係する商品」がランクインし全体の24.4%を占め、第4位には「食品・飲料商品」が全体の20.5%を占める結果となりました。
上記を見ても分かる通り、中国では化粧品がかなり人気です。日本のブランドだと「資生堂」などが特に大きな注目を集めています。
その理由としては、日本の企業の信頼度が高いこと、商品の品質が非常に高いこと、などが挙げられます。偽物が流出しやすい中国ならではの着眼点ですね。
中国向けの越境EC拡大を考える
ここでは、中国向けの越境ECの拡大方法について説明していきます。
以下の項目に焦点を当てて解説していきます。
- ECモールへ出店する
- 自社のECサイトをつくる
- 卸売りをする
- CtoCとして出品する
それでは、ひとつひとつ見ていきましょう。
ECモールへ出店する
一般的な越境ECでの商品の販売方法は、「ECモールへの出店」です。
中国ではプラットフォームの影響力がかなり強いです。そのため、プラットフォームを外れた場所での売買取引に慣れていません。
そのため、ECモールへお店を出すことが一番手っ取り早い売買方法になるのです。
中国向けの越境ECといってもさまざまなECモールが存在するわけですが、どのモールにお店を出すのか、ということを決めていく必要があります。
中国は世界最大規模のEC市場ということもあり、大手と呼ばれるECモールが多数存在します。中国の有名ECモールについては後ほど詳しく説明します。
出店にあたっては、完全に自社で運営していく方針をとるのか、それとも運営代行会社に一部、もしくは全ての運営を任せるのか、などということも検討していく必要があります。
出店に関わる審査について
モールによっては出店に厳しい審査がかかる場合があり、どんな店でも簡単に出店ができる、というわけではありません。
最近では、色々なブランド・メーカーの商品を販売するような店舗は、特に出店が困難になってきています。
仮に出店が可能であったとしても、売買取引を行う商品のメーカーが発行している「販売授権書」というものを提出する必要があります。
販売授権書を提出することで初めて店舗に商品を並べることができるので、あらかじめ販売授権書の発行が可能かどうかを確認しておきましょう。
また、モールによっては特定のカテゴリーの商品しか受け付けていない場合も存在するので注意しましょう。
自社のECサイトをつくる
モールに出店をせず、独自ドメインの自社サイトで商品を販売する方法も存在します。
中国では基本的にECモールへの出店がメインとなっていますので、完全自社運営でECサイトをつくるとしても、成功に繋げるのはかなり難しいと思います。
もちろん一部成功事例もあるため、自社のブランディングに価値を置いている場合は自社運営のECサイト作りにチャレンジしてみることも一つの手です。
モールで販売されていない商品を取り扱っていたり、モール出店での販売が困難なジャンルに値するような商品であれば、自社運営によるECサイトをつくることで成功の可能性が高まります。
ただし、中国国内にサーバーを置きECサイトを運営する場合は、運営する前にまず中国法人を設立する必要があり、次いで非常に高額な資本金を準備する必要もあるため、ハードルが高い商品販売方法になります。
自社運営サイトをつくる場合は、香港等にサーバーを置いてサイトを運営する方が有効的です。
卸売りをする
卸売りとは、中国現地の企業に頼んで商品を販売してもらったり、もうすでに越境ECを展開しているような店舗を開設している企業や中国向けに商品を輸出している日本の企業などに商品を卸して売買取引を行ってもらう方法を指します。
ただし、卸価格の交渉をしていく中で交渉が難航したり、広告費の負担を求められてしまう可能性もあります。
卸先が見つかったとしても、独占代理店契約を締結して販売を委託したところ、売り上げが全く伸びずに契約が終了してしまうことがあります。
また、反対に、数々の卸先に商品を提供したところ、価格競争が始まってしまい、大きな利益が得られなかったりすることもあるため、卸売りによる商品販売方法には注意が必要です。
最近では直営店の運営に尽力しているようなECモールも多く見られるので、商品をそのような直営店に卸すことができれば、商品販売によって大きな利益を得られるチャンスが生まれます。
CtoCとして出品する
モールに企業として出店をした場合は、コストや時間、人材確保などの面で大きな負担がかかります。
それほど深く踏み込むことなく試したいことがある場合は、「淘宝網(タオバオ)」と呼ばれるCtoCサイトに商品を出品すると有効的です。
淘宝網(タオバオ)は、個人消費者間での売買取引がメインとなるため、出店するだけでは手間や費用もそれほどかかりません。
ただし、出店をしたい場合には、中国現地の住所を持つ必要があり、同時に銀行の口座も必要となるので注意が必要です。
中国の有名越境ECモールを簡単に紹介!
ここでは、中国の有名ECモールをいくつか紹介していきます。
以下のサイトが、中国の主なECモールとなっています。
- 京東国際
- 小紅書商城
- 考拉海購(Kaola.com)
- 天猫国際(Tmall Global)
最後の「天猫国際(Tmall Global)」は、上記に挙げた中でも特に有名な越境ECモールで、アリババグループが運営する最大手のものとなっています。
2021年のアクティブユーザー数は9億7900万人であり、なんと中国国内のオンラインユーザーのほとんどがこの天猫国際(Tmall Global)を利用している状況となっています。
世界各国のブランドを取り扱っており、さまざまなお店が天猫国際(Tmall Global)へ出店しているため、利用者が多い分、競争が激しいのも特徴です。
中国第2位のECモールは「京東(ジンドン)」とよばれる越境ECモールで、2021年のアクティブユーザーはおよそ5億7000万人にも昇りました。
まとめ
今回は、中国越境ECの市場規模や、中国向けの越境EC拡大のためにどのような販売方法を取ればよいのか、ということを紹介していきましたが、いかがでしたでしょうか。
13億人もの人口を誇る中国は、世界でもトップクラスの巨大市場です。
収入の差も地域によって大きく変わってきますし、生活習慣の違いがあったり、利用するプラットフォームの違いがあったりと、国境を越えた文化的ギャップというものは少なからず存在します。
そのため、事前に商品販売のターゲットを決めておき、確実な需要が得られる商品を売り出せるような経営戦略を立てていくようにしましょう。