「越境ECで商品やサービスを販売するときに消費税は発生するの?」
「消費税還付を受け取るための条件は?」
越境ECに対して、このような疑問をお持ちの方もいるはずです。越境ECで商品やサービスを提供する場合、消費税は免税対象となります。また、一定の条件をクリアすることで、「消費税還付」を受け取ることが可能です。
これから越境ECで商品やサービスを提供する予定の方は、本記事で解説する消費税還付を受け取る条件、受け取る際の注意点をご確認ください。
目次
越境ECにおいて消費税は発生しない
越境ECで商品やサービスを提供する場合、相手は海外の消費者であるため、消費税は発生しません。そもそも消費税は、日本国内で消費される商品やサービスに対して課税されます。
日本で販売するのであれば、まずは消費者が税金を負担し、その税金を事業者が国へ納めます。しかし越境ECの場合、消費者は海外に住んでいるため免税対象となり、お互いが消費税を負担・納税しないのです。
越境ECのメリット「消費税還付」
越境ECにおける最終販売先が海外に住んでいる場合、事業者は商品の仕入れ時に発生した消費税分の還付を受けることが可能です。本来支払う必要のない消費税を払い、その金額が返金されることを「消費税還付」と言います。これは法律で認められているため、越境ECで販売する際はメリットとなります。
しかし、この消費税還付を受けるためには、ある一定の条件を満たした上で必要書類を提出しなければなりません。あらかじめ消費税還付を受けるための条件を確認しておきましょう。
越境ECで消費税還付を受けるための条件
越境ECで消費税還付を受けるためには、以下3つの条件をクリアする必要があります。消費税還付の受け取りを検討している方は、それぞれを必ず確認しておきましょう。
条件1.消費税課税事業者である
1つ目の条件は、消費税課税事業者であることです。消費税課税事業者とは、最終的に消費税を納税する義務がある事業者のことを指します。
消費税課税事業者の定義としては、課税売上高が1,000万円を超えている事業者であることです。課税売上高は、課税対象となる売上高であり、非課税取引を除いた売上を意味します。
法人であれば事業年度の前々事業年度、個人事業者なら前々年の1月から12月までの売上高が対象となります。また、新たに設立された法人は基準となる売上がないため、基本的に納税義務のない「消費税免税事業者」となります。
しかし、資本金が1,000万円以上の事業者や、一定の要件を満たす新設法人の場合は、消費税課税事業者となるため注意が必要です。
条件2.還付申請書類を期限内に提出する
還付申請書類を期限内に提出することも条件に含まれます。消費税還付を受けるためには、所轄の税務署長に申請書類を提出します。具体的な必要書類としては以下の通りです。
- 課税期間に対応する確定申告書
- 仕入控除税額に関する明細書
- 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書
- 輸出許可書
- 仕入れの納品書・領収書
これらを適切に提出する必要があります。なお、申請するタイミングは法人と個人事業主で異なり、法人は課税期間の末日の翌日から2ヶ月以内、個人事業主は課税期間の翌年3月末日までです。
条件3.原則課税方式を選択している
3つ目の条件は、原則課税方式を選択していることです。消費税の計算方法には「原則課税方式」と「簡易課税方式」の2種類があります。
原則課税方式とは、受け取った消費税から実際に支払った消費税を差し引き、その金額を消費税として納税する方式のことです。この原則課税方式を選択していなければ、越境ECで消費税還付は受けられません。
消費税免税事業者は消費税還付を受けられない
消費税還付を受けるための条件で解説した通り、「消費税課税事業者」しか消費税還付は受けられません。また、消費税を原則課税方式にしている必要もあるため、「消費税免税事業者」である場合は適用されないのです。
消費税還付を受けようと考えている場合、まずはご自身の事業が「消費税課税事業者であるかどうか」を確認しましょう。
なお、消費税課税事業者になるためには、納税地を所轄する税務署に「消費税課税事業者届出書」を提出する必要があります。新設企業であれば、1期目に「消費税課税事業者選択届出書」を提出します。
越境ECで消費税還付を受けるまでの流れ
越境ECで消費税還付を受けるためには、必要書類の提出や決まった手続きを踏む必要があります。還付するまでの流れを3つのステップで解説します。
トラブルなくスムーズに受け取るためにも、事前に以下の流れを確認しておきましょう。
ステップ1.必要書類を準備する
まずは必要書類を準備します。必要書類を確認し、あらかじめ用意しておけば手続きをスムーズに進められます。
主に重要となる書類は、課税期間分の「消費税及び地方消費税の確定申告書」と、「付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書」です。
これら書類はわざわざ取りに行かなくても、国税庁のWebサイトからダウンロードできます。そのほか、「仕入控除税額に関する明細書」や「輸出許可書」、「仕入れの納品書・領収書」なども忘れずに準備しましょう。
それぞれ所定の内容を記入する必要があるため、必要書類の作成が不安であれば、税理士に依頼するのも1つの手です。
ステップ2.必要書類を提出する
必要書類の準備ができたら、税務署長へ提出しましょう。提出する方法は、窓口申請とe-Tax(国税電子申告・納税システム)のどちらかが基本となります。
事業所が所在する税務署に届け出る場合、直接窓口に申請する必要があるものの、不明点をその場で解決できます。
一方、e-Taxでの申請であれば、パソコンを使ってスムーズに必要書類を提出できます。また、用紙での申請に比べて早く還付されやすいため、還付金を早めに受け取りたい方におすすめです。
ステップ3.還付金を受け取る
必要書類を税務署長に提出したあとは、還付金を受け取ります。還付金を受け取る際は、以下2つの方法から選択します。
- 預貯金口座への振込み
- 最寄りのゆうちょ銀行各店舗、もしくは郵便局
預貯金口座は、確定申告時の「還付される税金の受取場所」欄に記入することで指定します。ゆうちょ銀行や郵便局で受け取る場合は、直接出向く必要があるため注意が必要です。
なお、還付金が支払われるタイミングは、確定申告書の提出から1ヶ月〜1ヶ月半が目安となります。e-Taxであれば3週間程度で支払われます。
越境ECで消費税還付を受ける場合の注意点
越境ECで消費税還付を受け取る際には、いくつか注意すべきポイントがあります。事前に以下詳細を必ず確認しておきましょう。
注意点1.課税事業者・原則課税の確認
1つ目の注意点は、課税事業者・原則課税の確認です。そもそも消費税還付を受け取るためには、消費税課税事業者でなければなりません。
主な条件としては、指定期間内の課税売上高が1,000万円を超えていることです。また、消費税免税事業者である場合は、「消費税課税事業者届出書」を提出する必要があります。
さらに、消費税の計算方法「原則課税方式」の選択も必須です。「簡易課税方式」を選択していた場合は、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出し、「原則課税方式」への切り替えを忘れずに行いましょう。
ただし、消費税課税事業者や原則課税方式に切り替えた場合、2年間はそれぞれ元に戻すことはできません。
越境ECを用いて輸出を多く行う場合、あえて消費税課税事業者になったほうが税金の負担を減らせるケースもあるため、税金の負担状況を確認した上で、消費税課税事業者への切り替えを検討しましょう。
注意点2.必要書類の厳重管理
申請時に必要となる書類の管理にも注意が必要です。消費税還付を受ける際には複数の書類が必要となり、決まった方法で提出しなければなりません。
「必要書類が足りない」「誤って紛失してしまった」という状況に陥らないためにも、必要書類の厳重管理が大切です。わかりやすく管理できるよう、書類の種類ごとに分類しておくことをおすすめします。
また、必要となる書類を細かく記載すると、領収書や納品書、請求書などがあげられます。これら書類は消費税還付を受ける際に必要であるほか、税務調査が入ったときにも書類の提出が求められるため、誤って紛失しないよう厳重に管理しておきましょう。
注意点3.還付金の支払われるタイミング
還付金はすぐに支払われるわけではないため、あらかじめタイミングを確認しておきましょう。紙で申請した場合は1ヶ月〜1ヶ月半が目安となり、e-Taxであれば3週間程度で支払われます。
運転資金への充当を考えている方は、還付金がすぐに支払われないことを認識した上で、できるだけ早めに申請を行いましょう。
まとめ
本記事では、越境ECの消費税還付を受ける条件、受け取る際の注意点を解説しました。
越境ECで商品やサービスを販売する場合、相手は海外の消費者であるため、消費税は発生しません。また、いくつかの条件を満たすことで、商品の仕入れ時に発生した消費税分の還付を受けられます。
そのほか、還付金を受け取る際には注意点もあるため、これから消費税還付を受け取る予定がある方は、本記事の内容を事前に確認しておきましょう。