現在、海外市場でビジネスを発展させるための手段として、「越境EC」は特に注目を浴びています。とくにインバウンド消費が激変した感染症流行の現代、ウェブインバウンド消費の需要が高まってきており、加えて越境ECをうまく活用できれば、今まで以上の商品の売上を期待できます。
そこで今回は、2020年の越境EC市場規模を説明し、2021年度前期の売上商品について触れたあと、越境EC利用のメリットと注意点を説明していきます。
目次
越境ECの需要が高まってきた現代
2021年時点の東京商工リサーチの調べによると、越境ECの流通総額第一位を飾った購入サポートサービスは「Buyee」でした。
ここではその情報に基づき解説していきます。
2020年の世界越境EC市場規模は、なんと9,123億ドルとなりました。
日本円に換算するとおよそ101兆円となっており、非常に大きい数値となっています。
また、東京商工リサーチによると、2027年頃の市場規模はおよそ541兆円にまで上昇するといわれています。
以下からは、下記の二つの項目に焦点を当て解説していきます。
- 2021年前期の人気ジャンル2選
- 2021年前期の消費動向について
それでは、詳しく見ていきましょう。
2021年前期の人気ジャンル2選
2021年前期に流行したジャンルとしては、以下の2点です。
- ホビー(趣味)
- ファッション
それでは以下から見ていきましょう。
ホビー(趣味)
ホビー面では、アニメなどの日本文化が世界的に注目を浴び、数千万円でトレーディングカードの取引が海外で行われるなど、海外の熱狂的なファンが存在したことが大きな理由となっています。また、趣味に特化した商品は海外と連携できる越境ECと良好な関係を持ち、日本にしか売っていない限定品などを追い求めて商品が消費される傾向があります。
越境ECと国独自の希少性には密接な関係があります。
ファッション
また、ファッション面でいうと、日本のアパレルブランドのこだわりや品質は海外でも大変よい評価を得ているため、近年さらに人気を集めています。
その中でも特に厚い支持を得ているのは、日本のデザイナーズファッションやストリートファッションなどです。日本のリユース商品もその状態の良さから需要が高く、さらに日本限定スニーカーなどいわゆるロングテール商品も人気を集めています。
2021年前期の消費動向について
2021年前期に日本国内で注目を浴びたのが、「推し活」です。
新型コロナウイルスにより対面のライブが開催不可になったことなどが原因で、手軽に推しに出会えるオンラインショップでのグッズ購入が流行し、自宅時間の増加によりコンテンツ視聴も頻繁に行われるようになりました。
そのようなジャパニーズ・カルチャーの熱狂的な海外ファンが越境ECを通じて日本の商品を購入し、活発な流通に繋がったといえます。
また、品質の面において高い評価を得ている日本ですが、越境ECでは日本製のはさみなどの刃物の売上も上昇しました。刃先が大変繊細で、刺繍用であったり、自宅時間が増えたため手芸を始めた人も多く、手芸目的で利用されています。
さらに、人気ジャンルであるカルチャー・ホビー系の商品では、スポーツカーのダイキャストやソーシャルディスタンスを考慮できるアウトドア・アクティビティとして利用される釣り道具などが、越境EC上での売上率の高い商品ランキングの上位にランクインしています。
日本企業が出品している定番商品としては、日本製のヘアジェルやコロナ渦によるまとめ買いをサポートできる日本製の買い物フックなどが購入されています。
越境ECを利用するメリットとは?
ここでは、越境ECを利用する上でのメリットを紹介していきます。
越境ECには大きく分けて二つのメリットが存在します。
- 初期費用の観点から
- 集客効果の観点から
それでは、詳しく見ていきましょう。
初期費用の観点から
越境ECには初期費用が大変安く抑えられるという利点があります。海外に実際に店舗を設置するとなった場合は、土地代や、店の建築代・改装代などがかかってしまい、時間を多く消費することになります。
また、万一在庫切れとなった場合など、国内よりも海外の方が一つ一つのトラブルに時間と手間がかかり、在庫を再入荷するのに時間がかかります。
しかし、越境ECはインターネット上に日本の商品を売り出すことができるためそのような費用がかかりません。
そのため、越境ECを利用することで少額な初期費用+リスクを軽減した状態で出店・出品が可能になります。
集客効果の観点から
集客効果の観点から見てみましょう。
仮に、日本へ旅行をしにきた外国人観光客がある日本製品を気に入り、自国に戻った際に海外の方がその商品を購入する手段があれば、リピート買いする可能性が高まり、その分売上も上がります。
その購入ルートの有効的なものとして越境ECが挙げられるのです。
あるいは、越境ECと実店舗を同時展開している場合は、越境ECを通じて日本の商品をオンライン上で購入した海外の顧客が、日本を訪れた際に実際に実店舗に足を運んでくれる可能性もあります。
このように、越境ECを利用すると、実店舗への集客効果が高まったり、実店舗の商品が気に入り越境ECで購入するという現象が起こり得るため、大きな利点になるといえます。
日本の越境EC利用のポテンシャルの高さ
越境ECを利用する国々は、各国それぞれ特徴があります。商品の品質がよかったり、企業の信頼度が高かったりすると、その分将来的に購入するユーザーも増えていきます。
日本企業が越境ECを利用する際の大きな強みとしては、大きく分けて以下の3点が挙げられます。
- 信頼性がある
- 対応が丁寧
- 知識がある
それでは、以下から詳しく見ていきましょう。
信頼性がある
日本の企業は信頼性が高いため、日本の商品を買う際に安心感を抱くことができます。
海外では海賊版が頻繁に横行されていて、偽物が出回ることも多くあります。
そのような理由で、日本の企業が純正の日本の商品を販売しているというだけでも、海外では大きな価値があるのです。
信頼があることに加えて、日本製品はその品質の良さやこだわりの強さから強いブランド力もあるので、海外に商品を売り出す手段として越境ECを利用する際には、大きな強みとなります。
対応が丁寧
日本は”おもてなし”の精神で知られているように、あらゆる対応が大変丁寧で細かいです。
顧客の目線に立ち、問題解決を導く顧客への対応は営業系では特に大事なポイントです。
ただし、越境ECでは海外の顧客との取引となるため、日本の顧客対応の強みを最大限に引き出すためには、日本の企業と同じようにカスタマーサービスの体制を十分に整えておく必要があります。
また、柔軟な対応を目指すために、各国のネイティブスピーカーの雇用などにも気を配らなくてはいけません。
知識がある
日本はすでに世界的に見ても大きな影響力を持つ国です。
国内の事業もある程度発展していて、近年では海外と連携をとって経営している企業も少なくありません。必然的に海外と関わる機会も多くなります。
どこに何を売ったら商品が売れるのか、どのような商品が求められているのかなどの、販売上のノウハウが蓄えられている日本は、越境ECを通じた海外取引において大きな活躍ができるといえます。
マーケティング戦略の実績というのは、国内に限定せず、海外でも活かすことができます。
以上により、越境EC利用における日本の強みを上手に活かすことで、スムーズな事業展開が可能になります。
越境ECを利用する際の注意点
ここでは、越境ECを利用する際の注意点について紹介していきます。
商品のアピール方法について
商品を販売する上では、ターゲットとなる諸国の特徴を踏まえ、どのようなアピールをすることで商品が売れるのかを考える必要があります。
越境ECサイトに売り出す商品と実際に手元に届く商品の間にギャップが生じてしまうと、企業の信頼低下にも繋がってしまうので、細心の配慮が必要です。
オンライン上では難しい部分もあるかと思いますが、商品の持つ魅力は顧客へ正確に伝えるべきです。
決済方法について
決済方法は各国でその手段や規制が異なります。
取引先の国によって法律が異なるので、その国の方針に沿った決済方法を用意する必要があります。
各諸国に多く日本の越境EC利用者を持ちたい場合は、当然複数言語の翻訳も必要になります。
具体的には、欧米では決済方法が「PayPal」と呼ばれるものがオンライン決済サービスのメインで、中国では「Alipay」と呼ばれるオンライン決済サービスが有名で、そのほかにも「UnionPay」と呼ばれるクレジットカードが主に使用されています。
どの国の住民でも安心して使えるような決済方法を用意しましょう。
越境ECにおけるコストの考慮について
越境ECは売れた商品をそのまま海外に向けて発送します。そうなると、配送料が必要になりますが、国内と違ってその金額は高額になります。
購入元の地域によっても配送料が大きく変動し、配送料を含めた価格の表示が難しいです。
流通に関する事情も国ごとに異なるため、どのくらいの日数で到着するのかという情報がなかなか得られないのが現実です。
まとめ
今回は、越境ECの2021年前期のデータを使用し、その内訳を紹介したあと、越境ECのメリットと注意点を説明していきましたが、いかがでしたでしょうか。
越境ECを利用することでビジネスをより広範囲に行うことが可能になり、国内で価格競争の激しい商品でも、海外に売り出すことで、今まで以上にライバルを少なくすることもできます。
専門家の意見も取り入れながら、ぜひ越境ECの利用を検討してみましょう。