日本国内のオンラインショッピングにおいても「化粧品」は大変注目を集めている商品となっていますが、海外においても日本製品の品質の良さによって「化粧品」関連のブランドは非常に高い評価を得ています。日本製の商品に対する需要に対して十分に対応していくためにも、今後は海外に向けた商品の販売も大変重要な課題となってきます。
そこで今回は、越境ECにおいて中国向けの商品の中でも特に売り上げが高い「化粧品」という項目に焦点を当て、なぜそれほど化粧品が注目を集めているのかということを解説していきます。加えて、中国越境ECに関する概要も詳しく説明していきます。
目次
超巨大市場、中国での日本越境ECの影響
人口総数およそ14億人を誇る中国は、世界の中でも超巨大市場の位置付けとなっています。日本から中国に向けた越境ECの市場規模はおよそ1兆6,558億円となっていて、1年間での成長率は7.9%と今でもさらなる発展が期待されています。また、アメリカが中国に対して輸出した商品の総額は、およそ1兆7,278億円となっていて、日本から中国に向けた市場規模を上回る数値となっています。
さまざまな商品が中国に向けて販売され、国内でも消費者も多いことから、中国では非常に多くの商取引が行われています。また、日本から中国に向けた越境ECを通じた商取引の中でも、特に売り上げが高い製品が「化粧品」です。
2018年の日本貿易振興機構(ジェトロ)の中国の消費者に向けた日本製品等に対する意識調査によると、次のような結果が出ていることがわかっています。
越境ECでどのような日本製品を購入したことがあるのか、という質問に対して、「基礎化粧品」と答えた人がおよそ47%でした。さらに、「メイクアップ化粧品」と答えた人がおよそ45%存在し、上位トップ2を化粧品が占めています。
また、越境ECを通じて今後どのような日本製品を購入したいかという質問に対しても「基礎化粧品」と答えた人がおよそ38%を占め、こちらも群を抜いて最も多い回答となっていました。
上記の通り、中国の市場で日本の化粧品というのはかなり人気の高い商品となっていることがわかると思います。
なぜ日本の化粧品が中国で人気なのか?
日本製の商品は海外でも品質の高さが非常によい評価を得ていて、「資生堂」などの化粧品ブランドが人気を集めていることからわかるように、日本で販売している化粧品は世界的に見ても大変高い認知度を獲得していることも事実です。
また、日本企業の信頼性の高さも相まって中国製品よりも日本製品のものを購入したがるユーザーが存在するのも、日本製ブランドが人気の理由の一つです。
医学研究の開発で、生産をする過程でも厳重な基準が定められ、特別に認められた製品のみが販売されているという点や、天然に近い成分で作られているという点も、中国の消費者が好んで日本の化粧品を買う理由の一つとなっています。また、中国では偽物の商品が飛び交いやすいこともあり、「信頼度」や「安心感」が伴う商品はやはり価値があるものとして認められているのです。
ちなみに、日本の化粧品ブランドの一つである「資生堂」は、中国に向けたライブコマースを実施していて、高い競争率の中でも売り上げを伸ばし続けています。ライブコマースというのは、中継で映像を流しながら、商品を販売する手法のことを指します。
その映像を視聴している人々が販売者に対してリアルタイムで質問をすることが可能であるため、ライブコマースをすることによって、販売している商品の魅力をより深く確実に消費者に伝えられるようになりました。
2020年の11月における中国のEC界隈が盛り上がると言われている「独身の日」には、資生堂のライブコマース視聴者数がおよそ40万人にものぼったといいます。
資生堂のような大手人気ブランドに限らず、自分の会社が売り出している商品の魅力を全面的にアピールできる方法を探し出し、それをより強化していくことで、消費者もその熱意に自ずとついてくることでしょう。
競争が激しい化粧品市場で生き抜いていくためには、自社と他社でどのような違いがあるのかを伝えていくということが大切になってきます。
中国EC法第26条に関する概要
中国国内のECに関する条文を法律で定め、健全な市場発展を目指す取り組みが始まりました。この取り組みによって、2019年の1月から「中華人民共和国電子商務法(中国EC法)」が実施されることになりました。
また、日本から中国に向けて越境ECを展開する場合に最も注意しなければならないのが、中国EC法第26条です。
この中国EC法第26条の内容を簡潔に述べると、ECのような電子商取引を行う経営者・事業者が越境ECに従事する際には、輸出入監督管理の法律等を必ず遵守する必要がある、というものです。
これを遵守するために必要なことは以下の2点です。
- NMPA申請を行う
- CCC申請を行う
NMPA申請というのは、医療薬品や保険食品、化粧品などに関する申請を表していて、CCC申請というのは、電子製品などに関する申請を表しています。
中国EC法第26条に従うために、上記のどちらかの申請を行う必要があります。
化粧品の場合は、必ずNMPA申請を行ってから販売許可を得るという流れが必要不可欠となりますので、その点は注意しましょう。
NMPA申請について
化粧品を中国に向けて販売したい場合には、必ずNMPA申請というものが必要になります。
このNMPA申請には以下の2種類が用意されています。
- 一般申請
- 備案申請
一般申請というのは、特殊化粧品と言われている日焼け止めやヘアカラーなどに必要な申請のことを指していて、もう一方の備案申請というのは一般化粧品と言われているヘアケア、スキンケアなどに利用することが可能な申請のことを指しています。
また、一般申請では、NMPAの北京総局が対応することになっており、備案申請ではNMPAの地方局が対応することになっています。どちらも基本的な申請の流れは何も変わらず、以下の順序で行われることになります。
- 中国においてNMPA申請を済ませ、成分チェックという審査を通過する
- 国境内責任会社と契約を締結し、登録をする
- 販売に向けて必要となる書類を一通り揃え、製品のサンプルを中国に発送する
- NMPAの審査で無事通過できたら、販売許可が下りて販売が開始される
備案申請はおよそ3〜4ヶ月で販売許可が下りますが、一般申請の場合はおよそ6〜8ヶ月程度の期間がかかり、備案申請よりも長い時間がかかってしまうという点に注意してください。
中国の規制緩和について
中国における越境ECを盛り上げる一つの朗報が、中国の規制緩和です。
以下の四つの変更点について解説していきます。
- 許認可や届出を提出する必要がなくなった
- 越境ECエリアの拡大が認められた
- 輸入関税が優遇される商品が増えた
- 越境ECにおける輸入限度金額が引き上げられた
それでは、一つ一つ見ていきましょう。
許認可や届出を提出する必要がなくなった
中国国内の政策においては、新規の輸入品に対して通関証明書の提出を義務化しています。
化粧品などの通関証明書の提出が必要となる製品の輸入には、輸入許可証と呼ばれるものが別で必要になるはずでした。
しかし、その政策は延期となり、現時点では、越境ECにおける化粧品の輸入に際して輸入許可証が必要となることがありません。
これからまた変更点が出てくる可能性は十分にありますので、随時確認しておくことが大切です。
越境ECエリアの拡大が認められた
越境ECが利用できる対象区域はもともと15都市に限定されていたため、小範囲での商取引が行われていました。
しかし、この15都市からさらに新規で22都市が追加されたため、現在は合計37のエリアで越境ECの利用が可能となっています。
中国の主要都市が越境ECが利用できるエリアの範囲内に入ってきたことによって、越境EC事業者からすると商取引ビジネスのさらなる拡大が期待できる好機が訪れたことになります。
輸入関税が優遇される商品が増えた
中国の国内で指定を受けている輸入関税優遇商品を中国の消費者へ販売することで、対象から外れている商品よりもかかる税金が安くなり、利益の向上が期待できます。輸入関税が優遇される商品としては、麦芽が由来となるビールなどを含めた総数およそ63種類が新規で追加されることになりました。
この新規追加により合計1,321という数の品目が輸入関税輸入品として指定されることになったため、正確な情報の把握のためにも詳しく調べてみることをおすすめします。
越境ECにおける輸入限度金額が引き上げられた
中国の国内では越境ECで購入できる金額には限界があります。以前は一度の利用につきおよそ30,600円(2,000元)という規定がありました。
しかし、この限度額にも規制緩和が適用され、今のところは一度の利用につきおよそ7万6,500円にまで引き上げられることになりました。また、年間で購入する限度額も、一人につき、およそ306,000円(20,000元)から398,000円(26,000元)にまで金額が増えることになりました。
まとめ
今回は、越境ECにおいてなぜそれほどまでに化粧品が注目を集めているのかということを解説したあと、中国越境ECに関する概要も詳しく説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。新型コロナウイルスの拡大も相まって、オンラインショッピングの需要は拡大を続けています。
より大きな利益を目指したビジネス発展のためにも、海外向け商品の拡充は必須になってきます。そのためにも、越境ECの利用を本格的に検討していくことをおすすめします。