越境ECで商品・サービスを販売する際には、さまざまな課題に直面することになります。日本で販売する場合と状況やルールが大きく異なるため、あらかじめ適切な対応策を立てづらいのです。
また、海外ビジネスに慣れていない方は、ECサイトの立ち上げ時点でトラブルが生じるリスクがあります。そこで今回は、越境EC運用で直面する課題とその対応策、商品販売する上で重要となるポイントを解説します。
最後までご覧になれば、課題と対応策を事前に理解できた上で、自社にとって適切な販売方法を選択できるはずです。
目次
越境ECの市場規模は拡大している
越境ECの市場規模は年々拡大し続けています。経済産業省が発表した2020年度の「電子商取引実態調査」によると、2019年における世界の越境EC市場規模は、7,800億米ドルだとされています。
また、2026年には4兆8,200億米ドルまで拡大すると予想されています。なぜ越境ECは、世界中でここまで盛り上がっているのでしょうか?
その要因としては、大きく分けて以下の3つが考えられます。
- インターネットの普及
- スマートフォンの普及
- キャッシュレス決済の普及
これらテクノロジーの普及に伴い、越境ECの市場規模は拡大をみせています。また、インターネットやスマートフォンの普及率は今後も増加傾向にあるため、さらなる市場規模の拡大に期待が持てるでしょう。
日本企業の越境EC展開は他国に比べて遅れている
世界的に規模を拡大している越境ECですが、日本企業の場合はそこまで順調ではありません。「日本貿易振興機構(JETRO)」が2018年に実施した「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」によれば、商品販売にECを利用したことのある企業は全体の30.3%でした。
そのうち越境ECの利用経験がある企業は、半数以下の40.3%に留まっています。さらに、経済産業省が2020年に行った「電子商取引実態調査」によって、日本・アメリカ・中国それぞれの市場規模が明らかになりました。
国 | 越境EC 購入額 | 伸び率 |
日本 | 3,416億円 | 7.6% |
アメリカ | 1兆7,108億円 | 9.9% |
中国 | 4兆2,617億円 | 16.3% |
このように、市場規模が大きいアメリカ・中国に比べて、日本の越境EC市場は大幅に遅れていると言えます。
今後、アメリカ・中国に追いつくためには、越境ECを運用する際の課題点を理解することが重要となります。
越境EC運用で直面する5つの課題とその対応策
越境ECで成功を収めるのは容易ではありません。運用時に直面するであろう課題を5つ紹介します。
また、併せてその対応策も解説するため、これから越境ECを運用する予定の方はぜひご参考ください。
課題1.言語の壁が高い
1つ目の課題は、言語の壁が高いことです。越境ECでは外国人向けに商品やサービスを販売するため、販売する国ごとのわかりやすい説明文を掲載する必要があります。
また、商品登録やアフターサポート、配送伝票の作成まで他言語で対応するため、参入までのハードルが非常に高いと言えます。
対応策|難しい部分は外注する
他言語の対応に問題を抱える場合、難しい部分は外注することをおすすめします。自動翻訳を使って対応するのも1つの手ですが、顧客にわかりやすく伝えられないため、トラブルに発展するリスクがあります。
一方、翻訳会社やクラウドソーシングに依頼すれば、より高品質な翻訳が可能です。特に翻訳の作業量が多い場合、専門的な用語が多く含まれる場合などは、積極的に外注を検討しましょう。
課題2.認知と集客
越境ECで商品やサービスを販売する場合、認知と集客が大きな課題となります。越境ECに限らず、その国を代表するECサイトは山のように存在するため、現地の人に認知してもらうことが難しいのです。
仮に一時的な認知・集客に成功したとしても、「信用できないから購入しない」という選択を取られてしまいがちです。
対応策|SNSを活用する
認知と集客に関する対応策はSNSの活用です。スマートフォンが普及した現在では、SNSを使う人口が世界的に増え続けています。
越境ECを利用するきっかけも、InstagramやTwitterといったSNSであることが多いため、販売する上ではSNSを使ったマーケティング手法が特に有効です。
SNSを使って商品購入を誘導する手法は「ソーシャルコマース」と呼ばれ、今後も重要な戦略になることが予測されています。
課題3.配送時の破損リスク
3つ目の課題は、配送時の破損リスクです。越境ECでは海外に向けて商品を発送するため、日本での配送とは状況が大きく異なります。
顧客の手元に届くスピードはもちろんのこと、配送時の破損リスクも日本とは勝手が違うため注意が必要です。場合によっては、「商品が傷だらけだった」などのクレームを受けることもあります。
対応策|サポート体制が整った配送業者を選ぶ
配送時の破損リスクを防ぐためには、海外配送を請け負う安定した配送業者を選択するのがベストです。しかし、配送時の破損リスクは少なからずあるため、万が一破損・紛失した際にサポートが受けられる業者を選択しましょう。
また、顧客に破損した商品が届く可能性もあることから、クレームに関する対応マニュアルを作成しておくことをおすすめします。
課題4.社内体制の遅れ
越境ECで商品販売を始めたとしても、社内体制が不十分であることがあります。ECサイトの管理、配送手続き、マーケティング、クレーム対応など、さまざまな業務に課題を抱えるケースも少なくありません。
対応策|適性に合った人材を確保する
社内体制の遅れを招かないためにも、適性に合った人材を確保しましょう。人手が足りないからといって、無闇に人材を補充しても効果的ではありません。
ECサイトの管理ならウェブサイトの構築に長けている人、越境ECのマーケティングならマーケッターといったように、業務に合わせて適正な人材を確保しましょう。
課題5.海外の法律やルール
海外の法律やルールが課題になることもあります。当たり前ですが、海外には海外の法律があるため、日本とはルールが大きく異なります。
対応する国の法律を知らない状態で始めてしまうと、思わぬトラブルに見舞われる恐れがあるのです。
対応策|あらかじめ徹底的に調査する
海外の法律やルールに対しては、あらかじめ徹底的に調査しておきましょう。調査に時間がかかるかもしれませんが、大きなトラブルを起こして時間を取られるよりも効率的です。
また、現地の事情に詳しいパートナーがいれば、その都度相談して取引を慎重に進めましょう。
法律やルールは度々変化するため、常に最新の動向を追う必要があります。継続的に情報収集を行いましょう。
越境EC運用で注力すべき3つのポイント
越境ECの運用時に重要となるポイントは、主に以下の3つが考えられます。
- 適切な販売方法を選択する
- 消費税について理解しておく
- 事前にトラブルを予測する
越境EC運用を成功に導くためにも、以下詳細を事前に確認しておきましょう。
ポイント1.適切な販売方法を選択する
1つ目のポイントは、適切な販売方法を選択することです。商品やサービスに合わせて販売方法を選択すれば、売上高を最大化することができます。
代表的な販売方法としては、以下の3つがあげられます。
- 自社ECサイトで販売する
- 国内のオンラインモールに出店する
- 海外のオンラインモールに出店する
自社ECサイトで販売すれば自社ブランドのみを訴求できるため、一度購入した顧客と継続的に関係を持つことができます。しかし、自社ECサイトを立ち上げるにはある程度のコストが必要です。
一方、既存のオンラインモールに出店する場合は、低コストで販売をスタートできます。自社のこだわりを導入できない、手数料が発生するなどのデメリットはありますが、手軽に越境ECをスタートできるのは大きな利点です。
それぞれの特徴を理解した上で、自社の予算や目的に合わせて選択しましょう。
ポイント2.消費税について理解しておく
越境ECをスタートする上では、消費税についての理解も必要です。越境ECでの販売は海外の顧客を相手にするため、日本では当たり前の消費税が発生しません。
また、最終販売先が海外に住んでいる場合、事業者は商品の仕入れで発生した消費税分の還付を受けることが可能です。この「消費税還付」を受けるためには条件をクリアする必要があるため、事前に確認しておきましょう。
越境ECの消費税については、「越境ECでの商品提供は消費税が発生しない?『消費税還付』を受けるための条件を解説」で詳しく解説しています。
ポイント3.事前にトラブルを予測する
3つ目のポイントは、事前にトラブルを予測することです。越境ECでの商品販売やアフターサポートでは、日本の常識がほとんど通用しません。法律やルール、発送状況、顧客対応などは、対応する国によって大きく異なります。
越境ECを始める前に過去のトラブルや失敗事例などを調べ、これから起こるであろうトラブルを予測しておくことが大切です。
また、現地に信用できるパートナーがいる場合は、その国のルールや常識を教えてもらうことで、取引をスムーズに進めることができるでしょう。
まとめ
ここまで、越境EC運用で直面する課題とその対応策、商品を販売する上で重要となるポイントを解説しました。
越境ECの市場規模は年々拡大していますが、いまから越境ECに参入するのは容易ではありません。日本での商品販売とは勝手が違うため、さまざまな課題に直面する可能性があります。
しかし、越境EC運用はデメリットだけでなく、「低コストで海外ビジネスを始められる」「商品の販売数を増やせる」といったメリットも見込めます。ぜひ本記事で解説した対応策を試みた上で、越境ECへの参入を検討してみてください。