アメリカでは「Amazon」や「eBay」など、世界的に人気のECサイトが多数あります。中でも、最近は越境ECの需要が増加していることから、これから参入する企業も多いでしょう。しかし、アメリカ向けの越境ECはライバル会社が多数存在するため、いまから成功を収めるのは容易ではありません。成功するためにはいくつもの工夫を行い、適切な方法で越境ECを展開する必要があります。
そこで今回は、アメリカで越境ECのニーズが増加している理由、参入する際に重要となるポイントを解説します。本記事を最後まで読んだ上で、アメリカ向け越境ECへの参入を検討してみてください。
目次
アメリカでは越境ECの市場が年々拡大している
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、アメリカでは越境ECの市場が年々拡大しています。それに伴い、越境ECへのニーズも高まり続けています。
経済産業省が2020年7月に公表した「電子商取引に関する市場調査」では、2019年にアメリカの消費者が日本から購入した金額は9,034億円でした。
購入額1兆6,558億円の中国には届きませんが、成長率は中国が7.9%であるのに対し、アメリカは9.7%であるため、市場全体の成長率は上回っています。
また、越境ECの市場全体が年々拡大を続けていることから、アメリカの越境EC市場もさらに拡大すると予測されています。
そのため、これから越境ECに参入して商品・サービスを販売する場合、アメリカに対する施策も取り入れる必要があると言えるでしょう。
アメリカで越境ECのニーズが高まっている3つの理由
アメリカで越境ECのニーズが高まっている理由は、大きく分けて以下の3つが考えられます。
- インターネットの普及率
- スマートフォンの普及率
- キャッシュレス決済の普及率
1つずつ順番に解説します。
理由1.インターネットの普及率
1つ目の理由は、インターネットの普及率です。統計調査データプラットフォーム「Statista」の調査では、2020年時点におけるアメリカのインターネットユーザーは、2億8,800万人以上であることがわかりました。
これはアメリカ全人口の8割以上を占めています。インターネットを使う人が多ければ、その分ECサイトにアクセスする人数も増加する傾向にあるため、インターネットの普及率とともに越境ECのニーズも高まっているのです。
理由2.スマートフォンの普及率
スマートフォンの普及率が高いことも、越境ECのニーズが高まっていることにつながります。アメリカの調査会社「Pew Research Center」が2018年に行った調査によると、アメリカ人の約8割がスマートフォンユーザーであることが判明しました。
この数値は世界的に見ても非常に高く、スマートフォンの保有者は年々増加傾向にあります。越境ECはパソコンだけでなく、スマートフォンからでも利用できるため、普及率が高まれば越境ECの利用頻度も増加すると言えるでしょう。
理由3.キャッシュレス決済の普及率
3つ目の理由は、キャッシュレス決済の普及が進んでいることです。平成30年に実施した経済産業省の調査によると、2015年時点における日本のキャッシュレス決済比率が18.4%であったのに対し、アメリカのキャッシュレス決済比率は45%でした。
越境ECで商品やサービスを購入する場合、キャッシュレス決済を利用することがほとんどです。つまり、キャッシュレス決済の普及が進んでいれば、越境ECを利用するまでのハードルが低くなるため、自然と越境ECの利用者数も増加する傾向にあるのです。
アメリカ越境ECで重要となる3つのポイント
アメリカでは大手ECサイトがいくつも存在するため、工夫をしなければ競合サイトに勝つことができません。これからアメリカ向け越境ECを展開する場合は、以下3つのポイントを押さえておきましょう。
ポイント1.オムニチャネル
アメリカ向け越境ECでは、オムニチャネルが重要となります。オムニチャネルを意識して販売経路を拡大することで、新規顧客への効果的なアプローチを可能にします。そもそもオムニチャネルとは、企業と顧客をつなぐ販売経路をすべて統合し、総合的に顧客へアプローチする方法のことです。簡単にあらわすと、実店舗での販売とインターネットでの販売を連携させる取り組みを指します。
なぜアメリカ向け越境ECでオムニチャネルが重要であるのかと言うと、アメリカで成果をあげている専門的なECサイトは、現時点ではオムニチャネルの最適化に至っていないためです。アメリカのEC市場では、それぞれの業界で高いシェアを誇るサイトがすでに存在しています。「Amazon」や「eBay」のような全ジャンルを扱うECサイトもありますが、多くのサイトは専門的な商品を展開しています。
それら専門的な商品を扱う中小ECサイトには、「実店舗の経営がうまくいかなかったからECサイトを始めた」というサイトが多数存在します。つまり、現時点ではオンラインとオフラインの連携が不十分であるということです。
アメリカ向け越境ECを展開する場合、いまから大手ECサイトに競り勝つのは困難を極めます。しかし、オムニチャネルの最適化ができていない中小ECサイトにフォーカスすることで、参入できるチャンスをいくらでも作ることができるのです。
ポイント2.SNSの活用
2つ目のポイントは、SNSの活用です。アメリカの消費者が日本商品の情報収集で用いているツールは、YouTubeやInstagram、TwitterといったSNSが中心です。
特に、SNSでの投稿を見てECサイトに流れ着くケースが多く、間接的に商品やサービスの購入に結びついています。なお、SNSを使って商品購入を誘導する手法は、「ソーシャルコマース」と呼ばれます。2021年に実施した「eMarketer」の調査によると、アメリカにおけるソーシャルコマースの売上高は360億9,000万米ドルであり、前年に比べて約35%も増加しました。
このソーシャルコマースの売上高は年々増加しているため、SNSを用いた販売戦略が今後も重要となることが予測されます。
ポイント3.商品の価格設定
アメリカ向け越境ECにおいては、商品の価格設定に注力すべきだと言えます。なぜなら、アメリカ人はECサイトを利用する上で「商品の安さ」を優先する傾向があるためです。
PayPalの調査によれば、越境ECを利用する理由として最も多かった回答は「商品の価格が安い」でした。また、「自国ではその商品を購入できない」という回答が2番目に多く集まりました。
つまり、アメリカ人は越境ECを利用する上では、安価で珍しい商品を求める傾向があるのです。そのためアメリカ向け越境ECで成功するためには、その傾向を踏まえて価格設定に注力する必要があります。
アメリカのEC市場を代表する大手ECサイト3選
アメリカで人気のECサイトは、主に以下の3つがあげられます。
- Amazon.com(アマゾン)
- EBAY.COM(イーベイ)
- WALMART.COM(ウォールマート)
それぞれの特徴や強みを理解することで、アメリカ向け越境ECで成功するためのヒントが得られるはずです。これから越境ECで販売する予定の方は、以下詳細を事前に確認しておきましょう。
1.Amazon.com(アマゾン)
多くの方が知っているであろう「Amazon.com(アマゾン)」は、アメリカを代表するECサイトの1つです。本社はワシントン州シアトルにあり、アメリカ国内でのシェア率は約5割を占めています。
また、アメリカ国内の有料会員数は約6,500万人なので、約5人に1人が利用していることになります。有料会員数を全世界で換算すると1億人を突破していることから、世界を代表するECサイトと言っても過言ではないでしょう。
2.EBAY.COM(イーベイ)
「EBAY.COM(イーベイ)」は、世界最大級の越境ECマーケットプレイスです。2020年の調査によると、アメリカ国内のEC売上トップ10のうち、Amazon、Walmartに次ぐ第3位を獲得。
日本国内の知名度はそこまでありませんが、アメリカを中心にカナダやドイツ、フランスなど、世界中で広く認知されています。また、アクティブユーザー数は約1.8億人であり、全世界でのシェアを年々拡大させています。
3.WALMART.COM(ウォールマート)
「WALMART.COM(ウォールマート)」もAmazon、eBayと並ぶ大手ECサイトです。元々は小売最大手企業でしたが、オンラインでの商品販売をスタートし、オムニチャネル型のサプライチェーンを構築しました。
Walmartは実店舗の不調からオンライン販売によって成功を収めたことから、オムニチャネルの最適化が功を奏した最たる事例だと言えます。
オンラインとオフラインの連携を考えている方は、Walmartの販売戦略を参考にしてみてください。なお、2017年における1ヶ月あたりの小売専門ユーザー数は、Amazonに次いで第2位を獲得しています。
まとめ
本記事では、アメリカで越境ECのニーズが増加している理由、代表的なECサイトを解説しました。
アメリカにおける越境ECの市場規模は、インターネットやスマートフォンの普及に伴い、年々拡大しています。
ただし、競合となる中小ECサイトの数が多いため、アメリカ向け越境ECに参入するのは容易ではありません。これから越境ECに参入して成功を収めたい方は、ぜひ本記事で解説した重要ポイントを参考にしてみてください。